「療育に通っているけれど、家庭ではどのように関わればいいのだろう」と迷うことはありませんか。
家庭では、専門的な療育をそのまま再現する必要はありません。食事や着替え、遊び、会話など、普段の生活の中にも、子どもの発達や生活を支える関わりを取り入れることができます。
この記事では、生活や遊びの中で子どもの発達上のニーズに配慮する関わりを、便宜上「療育的な関わり」と表現します。生活習慣・遊び・言葉・順番待ち・片付け・気持ちの切り替え・施設との連携という7つの視点から、家庭で取り入れやすい方法を紹介します。
ただし、発達の特徴や得意・苦手、適した関わり方は一人ひとり異なります。無理に取り組ませず、必要に応じて児童発達支援や放課後等デイサービスなどのスタッフと相談しながら、その子に合った方法を考えていきましょう。
家庭での療育的な関わりが子どもの発達を支える理由
家庭は、子どもが食事や着替え、遊び、休息などの日常生活を送る大切な場所です。児童発達支援や放課後等デイサービスなどで専門的な支援を受けている場合でも、家庭で過ごす時間の中で子どもの特徴に合わせた関わりを意識することは、日々の生活を過ごしやすくするための一つの方法になります。
一方で、保護者が家庭で専門家と同じ支援を行う必要はありません。家庭で無理なくできることと、専門職に任せることを分けながら取り組むことが大切です。
施設での療育と家庭での関わりはどちらも大切
児童発達支援や放課後等デイサービスでは、子どもの発達段階や特性、生活状況などを確認しながら、一人ひとりのニーズに応じた支援が行われます。
家庭では、食事や着替え、遊び、家族との会話など、施設とは異なるさまざまな経験があります。そのため、施設で大切にしている関わり方を家庭でも無理のない範囲で参考にすると、子どもが日常生活の中で経験を重ねる機会につながります。
施設と家庭のどちらかだけで支えるのではなく、必要に応じて情報を共有しながら、その子に合った環境や関わり方を一緒に考えていくことが大切です。
日常の積み重ねが子どもの経験につながる
日常生活には、さまざまな動作やコミュニケーションを経験する機会があります。
たとえば食事では、「スプーンを持つ」「食べ物をすくう」「口に運ぶ」といった複数の動作を繰り返し経験できます。着替えや片付けにも、手順を確認したり、自分でできる部分に取り組んだりする機会があります。
同じ経験を繰り返すことが、動作や手順を覚える助けになる場合があります。ただし、習得のペースには個人差があります。できないことを何度も繰り返させるのではなく、子どもの様子を見ながら方法や難しさを調整しましょう。
1.生活習慣の場面でできる療育的な関わり
食事・着替え・就寝など、毎日の生活習慣には同じ流れを繰り返し経験できる場面があります。
特別な教材を用意しなくても、手順をわかりやすくしたり、子どもが自分でできる部分を増やしたりすることで、生活しやすい環境づくりにつなげることができます。
食事の準備や片付けを通じて手順を経験する
食事の場面では、準備から片付けまでの一連の流れを経験できます。
たとえば、「スプーンを出す→席に座る→食べる→食器を決めた場所に運ぶ」というように、できるだけわかりやすい流れにしてみましょう。
最初は「次はスプーンを出そうね」などと声をかけながら一緒に取り組み、慣れてきたら自分でできそうな部分を任せます。
できたときには、「食器を自分で運べたね」など、何ができたのかが伝わる言葉で認める方法もあります。褒め方への反応にも個人差があるため、子どもが受け取りやすい伝え方を探してみましょう。
着替えや身支度をスモールステップで取り組む
着替えは、「服を選ぶ」「袖に腕を通す」「ズボンに足を入れる」「引き上げる」など、いくつもの動作から成り立っています。
一度にすべて行うことが難しい場合は、一つの動作を小さく分けて取り組む「スモールステップ」が役立つことがあります。
たとえば、最初は大人がズボンを持ち、「足を通すところだけ自分でやってみる」といった形でも構いません。
「全部できたか」ではなく、「今日はここまで自分でできた」と、その子なりの進み方を大切にしましょう。
寝る前の流れをわかりやすくする
次に何をするのかわからない場面で、不安を感じたり切り替えに時間がかかったりする子どももいます。
その場合は、「お風呂→歯みがき→絵本→寝る」のように、寝る前の流れをある程度決めておく方法があります。
言葉だけではわかりにくい場合は、絵や写真を使って予定を示す方法もあります。ただし、毎日まったく同じ流れにこだわる必要はありません。子どもの体調や家庭の状況に合わせて調整しましょう。
2.遊びの中でできる療育的な関わり
遊びは、子どもが体を動かしたり、人とやりとりしたり、物を操作したりするさまざまな経験につながります。
「発達のために遊ばせる」と考えすぎるのではなく、まずは子ども自身が興味を持ち、楽しめることを大切にしましょう。
体を使った遊びでさまざまな感覚を経験する
体を動かす遊びでは、バランスを取ったり、力加減を調整したり、物に触れたりする経験ができます。
たとえば、床に置いたクッションの上を歩く、新聞紙を丸める、タオルを使って引っ張り合うといった遊びがあります。
ただし、感覚の感じ方には大きな個人差があります。揺れる動きや大きな音、特定の触感などを強く嫌がる子どももいるため、苦手な刺激を無理に経験させないことが大切です。
転倒や誤飲などにも注意し、年齢や発達段階に合わせて安全を確保したうえで楽しみましょう。
ごっこ遊びやカードゲームでやりとりを楽しむ
ごっこ遊びでは、人とのやりとりやさまざまな言葉に触れることができます。
お店屋さんごっこなら、「いらっしゃいませ」「ください」「ありがとう」など、場面に合った言葉を使って遊べます。
カードゲームでも、「これは何?」「どれにする?」などとやりとりしながら楽しめます。
大切なのは、言葉を言わせることを目的にしすぎないことです。子どもが興味を示している遊びに大人も参加し、その中で自然にやりとりする機会をつくってみましょう。
お絵かきや工作で手や目を使う経験を増やす
お絵かきや工作では、クレヨンを握る、紙をちぎる、のりを塗るなど、手や指を使うさまざまな経験ができます。
年齢や発達段階に応じて、はさみなどの道具を使う活動を取り入れることもできます。ただし、はさみを使用するときは、大人が見守り、安全に十分注意してください。
完成した作品の上手・下手ではなく、「この色を選んだんだね」「ここをたくさん描いたね」など、取り組んだ過程に目を向けることも大切です。
3.言葉のやりとりを育てる日常の関わり方
言葉やコミュニケーションの発達には個人差があります。たくさん話しかければ必ず言葉が増えるというものではありませんが、家庭での会話や遊びは、さまざまな言葉ややりとりを経験する機会になります。
言葉だけでなく、指さし・表情・身ぶり・絵や写真など、その子が使いやすい伝え方も大切にしましょう。
子どもの言葉を受け止めて少し広げて返す
子どもが話した言葉を繰り返したり、少し言葉を足して返したりする方法があります。
たとえば子どもが「わんわん」と言ったときに、「そうだね、わんわんがいるね」「大きい犬だね」などと返します。
子どもの伝えたいことを受け止めながら少し表現を広げることで、さまざまな言葉に触れる機会をつくれます。
発音や言い方を何度も訂正するより、まず「伝わった」という経験を大切にしましょう。
二択で答えられる質問からやりとりを始める
「何が食べたい?」のように自由に答える質問が難しい場合は、「りんごとバナナ、どっちがいい?」と選択肢を示す方法があります。
言葉で答えるのが難しい場合でも、指さしや視線、絵カードなどで選んでも構いません。
子どもが選んだら「バナナにしたんだね」と確認すると、自分の意思が相手に伝わったことを感じやすくなります。
絵本の読み聞かせで言葉に触れる機会をつくる
絵本の読み聞かせは、普段の会話とは異なる言葉や表現、物語に触れる機会になります。
読み終わった後に「この子はどんな気持ちかな?」と話してみる方法もありますが、質問に答えることを求めすぎる必要はありません。
子どもが興味を持っている絵を一緒に見たり、好きなページを繰り返し読んだりするだけでも構いません。
最後まで読むことより、一緒に絵本を楽しむ時間を大切にしましょう。
4.遊びの中で順番待ちを経験する
自分の番を待つことが難しかったり、待ち時間が長くなると落ち着かなくなったりする子どももいます。
その場合は、遊びの中で短い待ち時間から経験していく方法があります。
順番を意識できる遊びを取り入れる
ボードゲームやカードゲームなどには、自分の番と相手の番を交互に行うルールがあります。
最初は待つ時間を短くして、「次は○○ちゃんの番、その次はあなたの番だよ」と順番をわかりやすく伝えてみましょう。
順番を待てたときは、「自分の番まで待てたね」と具体的に伝える方法もあります。
ゲームのルール自体が負担になる場合は、ボールを交互に転がすなど、より簡単なやりとりから始めても構いません。
次の行動をあらかじめ伝える
楽しく遊んでいる途中で突然「もう終わり」と言われると、気持ちの切り替えが難しくなる子どももいます。
その場合は、「あと5分で片付けよう」「あと1回やったら終わりにしよう」など、少し前に予定を伝えてみましょう。
時間の感覚がわかりにくい場合は、タイマーや時計、絵などを使って伝える方法が役立つこともあります。
ただし、予告の方法やタイマーの音を苦手とする子どももいるため、その子に合った伝え方を探すことが大切です。
5.片付けを通じて生活しやすい環境をつくる
片付けには、「どこに戻すのかを確認する」「同じ種類の物をまとめる」「一つずつ作業する」といった複数の要素があります。
子どもが片付けに取り組みやすくなるよう、声かけだけでなく環境そのものをわかりやすくすることも大切です。
片付けを遊びのように取り入れる
「赤いおもちゃから箱に入れよう」「一緒にブロックを集めよう」など、遊びの延長として声をかける方法があります。
タイマーを楽しめる子どもであれば、「タイマーが鳴るまで一緒に片付けよう」と取り入れてもよいでしょう。
一方で、競争になると負担を感じる子どももいます。急がせることより、子どもが取り組みやすい方法を見つけることを優先してください。
「どこに戻すか」がわかりやすい環境を整える
片付けにくさの背景には、「どこに何を戻せばよいかわからない」という理由がある場合もあります。
収納場所におもちゃの写真やイラストを貼ったり、種類ごとに箱を分けたりすると、戻す場所を確認しやすくなることがあります。
すべての物を細かく分類する必要はありません。子どもが理解しやすく、家族も続けやすいシンプルな方法から試してみましょう。
6.気持ちの切り替えを助ける関わり方
自分の気持ちを理解したり、興奮した状態から切り替えたりすることには個人差があります。発達上の特徴などから、気持ちの切り替えに時間が必要な子どももいます。
怒ったり泣いたりすること自体を悪いことと考えるのではなく、「何が嫌だったのか」「どのような方法なら落ち着きやすいのか」を一緒に探していくことが大切です。
感情に名前をつけて気持ちを表現する手助けをする
子どもが怒ったり泣いたりしたときは、「悔しかったんだね」「悲しかったのかな」など、気持ちを言葉にして伝える方法があります。
ただし、大人が決めつけるのではなく、「悲しかったのかな?」など、子どもの気持ちを確認するような伝え方を意識しましょう。
言葉で表すことが難しい場合は、表情の絵や感情カードなどを使う方法が役立つこともあります。
言葉で気持ちを伝えることだけを目標にせず、身ぶりやカードなど、その子に合った伝え方も大切にしてください。
落ち着きやすい方法を一緒に探す
気持ちが高ぶったときに落ち着きやすい方法を、普段から一緒に探しておくこともできます。
たとえば、深呼吸をする、好きな物を持つ、静かな場所に移動する、少し一人で過ごすなど、方法はさまざまです。
ただし、深呼吸や静かな場所がすべての子どもに合うわけではありません。嫌がる方法を無理に行わせるのではなく、その子が安心しやすい方法を探しましょう。
強い興奮や自傷・他害など安全に関わる行動が頻繁に見られる場合は、家庭だけで対応しようとせず、利用している事業所や医療機関などの専門家に相談することも大切です。
7.児童発達支援・放課後等デイサービスと連携する
家庭での関わりを保護者だけで考える必要はありません。
児童発達支援や放課後等デイサービスでは、子どもの発達状況や特性、本人や家族のニーズなどを踏まえて支援が行われます。
家庭で困っていることや、施設でうまくいっている方法などを共有しながら、その子に合った関わり方を一緒に考えていくことが大切です。
施設で取り組んでいる内容を家庭で無理なく活用する
施設でどのような声かけや環境調整を行っているのか、担当スタッフに聞いてみるのも一つの方法です。
たとえば、施設で絵や写真を使ったスケジュールを利用している場合、「家庭でも使えそうでしょうか」と相談できます。
ただし、施設で行っている支援方法を、そのまま家庭で再現すればよいとは限りません。施設と家庭では環境や目的が異なるため、家庭生活に合った方法に調整することが大切です。
「家でも同じことをしなければ」と考えるのではなく、家庭で無理なく取り入れられる方法をスタッフと相談してみましょう。
困ったときは専門家に相談して一人で抱え込まない
「家ではなかなかうまくいかない」「どのように関わればよいかわからない」と感じたときは、利用している児童発達支援・放課後等デイサービスのスタッフなどに相談できます。
相談支援を利用している場合は、相談支援専門員に相談する方法もあります。そのほか、子どもの状態や相談内容によっては、自治体の発達相談窓口、保健センター、医療機関などが相談先になる場合もあります。
一つの方法ですぐに解決するとは限りませんが、家庭で困っている具体的な場面を伝えることで、その子に合った方法を一緒に考えてもらえることがあります。
地域によっては、保護者同士が交流できる親の会や相談会などが行われている場合もあります。
完璧を目指さず家庭で続けられる方法を選ぶ
家庭での関わりを毎日完璧に行う必要はありません。
子どもの体調や気分によってうまくいかない日もあれば、保護者に余裕がない日もあります。
「今日は一緒に片付けられた」「自分で一つ選べた」など、小さな変化やその子なりの取り組みに目を向けてみましょう。
発達や生活上の課題、必要な支援の内容や期間は子どもによって異なります。家庭だけで抱え込まず、専門機関とも連携しながら、無理なく続けられる方法を見つけていくことが大切です。
まとめ|家庭でできる療育的な関わりを無理なく取り入れよう
家庭では、特別な教材や専門的なプログラムを用意しなくても、生活や遊びの中で子どもがさまざまな経験をする機会をつくることができます。
今回紹介したのは、生活習慣、遊び、言葉のやりとり、順番待ち、片付け、気持ちの切り替え、施設との連携という7つの視点です。
ただし、同じ方法がすべての子どもに合うわけではありません。発達の段階や特性、興味、苦手なことなどによって、取り入れやすい方法は異なります。
家庭で専門的な療育を行おうと頑張りすぎる必要もありません。子どもと過ごす日常を大切にしながら、できそうなことを一つずつ試してみましょう。
うまくいかないことや気になることがあれば、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの支援者とも情報を共有し、保護者だけで抱え込まずにその子に合った関わり方を一緒に考えていくことが大切です。

