「遊びをなかなか終われない」「次の行動に移れず泣いたり怒ったりする」など、子どもの切り替えの難しさに悩むことはありませんか。
子どもは成長の途中にあり、気持ちを整えたり、先の予定をイメージしたりすることが難しい場合があります。また、切り替えやすい方法には個人差があります。
本記事では、子どもの切り替えを助ける4つの声かけや、タイマー・絵カードなどの視覚的な工夫を紹介します。家庭で取り入れやすい方法から、発達面が気になる場合の相談先まで確認していきましょう。
子どもが切り替えを難しく感じやすい場面とは
子どもが行動や気持ちを切り替えるのに時間がかかる場面は、日常生活の中にさまざまあります。特に、楽しいことを終える時や予定が変わった時などは、切り替えにくくなることがあります。
まずは、よく見られる場面を確認してみましょう。
遊びをなかなか終えられない
楽しい遊びに夢中になっていると、途中で終えることを嫌がる子どもがいます。
たとえば、公園から帰る時間になっても「まだ遊ぶ」と泣いたり、家でおもちゃに夢中になっている時に「ご飯だから片付けよう」と伝えても、すぐに手を止められなかったりすることがあります。
特に幼い子どもは、「あと5分」といった時間の長さや、その後の予定を十分にイメージできないこともあります。そのため、大人から見ると簡単な切り替えでも、本人にとっては難しい場合があります。
次の行動になかなか移れない
一つのことが終わっても、次に何をするのか分からなかったり、気持ちの準備に時間が必要だったりすると、次の行動へ移りにくいことがあります。
朝の支度でパジャマのまま過ごしていたり、保育園や学校へ行く準備の途中でテレビやおもちゃに気を取られたりするのも、その一例です。
このような場合は、「着替えて」「早くして」と伝えるだけではなく、次にすることを具体的に示すと理解しやすくなることがあります。
急な予定変更を受け入れにくい
予定が突然変わった時に、強く嫌がったり泣いたりする子どももいます。
たとえば、「今日は雨だから公園には行かず、買い物に行こう」と予定を変えた時や、いつも通る道が工事で使えない時などです。
予定や手順が分かっていることが安心につながっている子どもの場合、急な変更を理解して気持ちを切り替えるまでに時間が必要なことがあります。
失敗した気持ちを引きずってしまう
遊びや作業が思い通りにいかなかった後、気持ちを立て直すまでに時間がかかる場合もあります。
ブロックで作ったものが崩れて泣いたり、お絵かきで思い通りに描けず「もうやらない」と怒ったりすることがあります。
自分の気持ちを言葉にしたり、落ち着く方法を見つけたりする力は、さまざまな経験を重ねながら育っていきます。すぐに気持ちを切り替えることを求めすぎず、落ち着くまで待つことも大切です。
子どもが切り替えを難しく感じる理由
切り替えに時間がかかる理由は一つではありません。年齢や発達段階、その日の体調や気分、周囲の環境などによっても変わります。
ここでは、考えられる主な理由を4つ紹介します。
目の前のことに夢中になっている
好きな遊びや興味のあることに集中している時は、別の行動へ意識を向けるまでに時間がかかることがあります。
たとえば、大好きな電車のおもちゃで遊んでいる時には、親から声をかけられてもすぐに反応できないことがあります。
無視をしていると決めつけず、「今の遊びに集中しているのかもしれない」と考え、少し前から声をかけるなどの工夫をしてみましょう。
感情を整える力が発達の途中にある
幼い子どもは、悔しさや怒り、悲しさといった強い感情を、自分だけですぐに落ち着かせることが難しい場合があります。
遊びを終えたくない時に泣いたり、思い通りにならず怒ったりすることもあります。
そのような時は、すぐに気持ちを切り替えさせようとするより、「まだ遊びたかったんだね」などと気持ちを受け止めながら、落ち着く時間を確保することが大切です。
先の見通しを持つことが難しい
次に何が起こるのか分からないと、不安になったり、今していることを終えにくくなったりする場合があります。
大人であれば「着替えたら家を出て、その後に保育園へ行く」と一連の流れをイメージできます。しかし、幼い子どもにはその流れが分かりにくいことがあります。
「着替えたら朝ご飯だよ」「あと1回滑ったら帰ろう」など、次にすることを具体的に伝えると、見通しを持ちやすくなる場合があります。
次にすることを嫌だと感じている
次の行動そのものが苦手だったり、嫌だと感じていたりすることもあります。
たとえば、次のような場面です。
- おもちゃを片付けたくない
- 保育園や学校へ行きたくない
- 歯磨きが苦手
このような場合は、「切り替えが苦手だから」と考えるだけでなく、何を嫌がっているのかを確認することも大切です。
音や触った感じが苦手、やり方が分からない、疲れているなど、別の理由が隠れている場合もあります。
切り替えが苦手な子どもへの4つの声かけ
子どもがなかなか動かない時は、つい「早くして」と何度も言いたくなるものです。しかし、伝え方を少し変えることで、次の行動を理解しやすくなる場合があります。
ここでは、家庭で試しやすい4つの声かけを紹介します。
まずは子どもの気持ちを受け止める
遊びを終えたくない時などは、最初に子どもの気持ちを言葉にしてみましょう。
たとえば、「まだ遊びたかったんだね」「これを最後まで作りたかったんだね」と伝えます。
気持ちを受け止めることは、子どもの希望をすべて受け入れることとは異なります。
「まだ遊びたいよね。でも今日は帰る時間だから、あと1回滑ったら帰ろう」のように、気持ちを認めたうえで次の行動を伝える方法があります。
終わるタイミングを事前に伝える
突然「おしまい」と伝えるよりも、少し前から終わるタイミングを知らせた方が、準備しやすい子どももいます。
公園で遊んでいる場合は、「あと5分くらいで帰ろうね」「滑り台をあと3回したら帰ろう」などと伝えてみましょう。
時間の感覚がまだ分かりにくい子どもには、「あと1回」「この動画が終わったら」など、具体的な区切りを使う方法もあります。
一緒に最初の一歩を始める
言葉だけで指示するのではなく、大人が一緒に最初の行動を始める方法もあります。
おもちゃを片付ける時は、「一緒に赤いブロックから箱に入れよう」と声をかけ、最初の数個を一緒に片付けてみます。
着替えが進まない時も、「まず靴下から一緒にやろう」など、やることを小さく区切ると取り組みやすくなる場合があります。
できたことを具体的に伝える
切り替えられた時は、結果だけではなく、できた行動を具体的に伝えてみましょう。
たとえば、「声をかけたあとにおもちゃを片付けられたね」「あと1回で終われたね」と伝えます。
できたことを具体的に言葉にすることで、子ども自身も「何ができたのか」を理解しやすくなります。
ただし、褒め方やスキンシップの好みには個人差があります。子どもの様子を見ながら、無理のない方法で伝えましょう。
切り替えを助ける3つの視覚的な道具
言葉だけでは予定や時間が分かりにくい子どもには、目で確認できる道具が役立つ場合があります。
すべての子どもに必要なわけではありませんが、言葉で何度も伝えても分かりにくそうな時は試してみる方法があります。
残り時間を確認できるタイマー
「あと5分」と言われても、幼い子どもにとって時間の長さはイメージしにくいことがあります。
そのような時は、残り時間が色や目盛りで確認できる視覚的なタイマーを利用する方法があります。
「色がなくなったらお片付けしよう」などと伝えることで、終わりのタイミングを目で確認できます。
ただし、タイマーの音を嫌がったり、タイマー自体がプレッシャーになったりする子どももいます。様子を見ながら取り入れましょう。
次の予定を示す絵カード
言葉だけでは次の予定を理解しにくい場合は、絵や写真を使って伝える方法があります。
たとえば、次のようなカードを用意します。
- トイレに行く
- 着替える
- ご飯を食べる
- 歯を磨く
- 家を出る
「今は着替え、その次は朝ご飯」のように順番を見せると、予定を確認しやすくなる子どももいます。
市販のカードだけでなく、自宅で撮った写真や簡単なイラストを利用しても構いません。本人にとって分かりやすいものを選びましょう。
一日の流れを確認できるスケジュール表
一日の予定をあらかじめ確認できるスケジュール表も、見通しを持つための方法の一つです。
ホワイトボードなどに、朝から夜までの予定を絵カードや写真で並べます。終わった予定を外したり、印を付けたりすると、今どこまで進んでいるかも確認できます。
予定が変わった時は、大人が一方的に変更するのではなく、「今日は雨だから、公園のカードを買い物のカードに変えるよ」などと説明しながら変更すると分かりやすくなります。
予定変更への反応には個人差があるため、カードを使えば必ず落ち着けるというものではありません。子どもの様子に合わせて使い方を調整しましょう。
忙しい家庭でも取り入れやすい切り替えの工夫
毎日忙しい中で、すべての場面に時間をかけて対応するのは難しいものです。
ここでは、家庭の負担を増やしすぎずに取り入れられる工夫を紹介します。
前日の夜に翌日の準備をしておく
朝は限られた時間の中で多くの準備が必要になるため、大人も子どもも余裕がなくなりやすい時間帯です。
着る服や保育園・学校へ持って行くものなど、準備できるものは前日のうちに用意しておくと、朝に対応することを減らせます。
服選びで時間がかかる場合は、前日に子どもと一緒に選んでおく方法もあります。
家庭の状況に合わせて、できる範囲だけ取り入れてみましょう。
遊びの要素を取り入れる
支度を嫌がる時は、遊びの要素を加えることで取り組みやすくなる子どももいます。
たとえば、次のような声かけがあります。
- 「赤いおもちゃから箱に入れてみよう」
- 「忍者みたいに静かに洗面所まで行ってみよう」
- 「靴下とズボン、どっちから着る?」
競争を楽しめる子どももいますが、急かされることが苦手な子どもには逆に負担になる場合があります。
本人が楽しめる方法を探してみましょう。
親も無理をしすぎない
子どもの切り替えに毎回じっくり付き合うことは、保護者にとって大きな負担になることがあります。
時間がない日は家事を簡単にしたり、家族で役割を分担したりするなど、保護者側の負担を減らすことも大切です。
毎回理想的な声かけができなくても問題ありません。家庭の状況に合わせ、取り入れやすい工夫から試してみましょう。
切り替えの難しさが続き、発達面が気になる場合
切り替えに時間がかかることだけで、発達上の問題があると判断することはできません。
年齢や性格、その日の体調、生活環境などによっても子どもの反応は変わります。
一方で、切り替えの難しさによって家庭生活や園・学校での生活に大きな負担が生じている場合や、ほかにも発達について気になることがある場合は、周囲へ相談することも選択肢です。
落ち着きやすい環境を用意する
泣いたり怒ったりしている時に、たくさんの言葉で説明すると、かえって落ち着きにくい子どももいます。
そのような場合は、周囲の安全を確認したうえで、刺激の少ない場所で落ち着く時間を取る方法があります。
部屋の静かな場所や、お気に入りのクッションがある場所など、本人が安心しやすい環境を探してみましょう。
無理に話を続けたり、その場ですぐ理由を聞き出したりせず、子どもの様子を見ながら待つことも一つの対応です。
児童発達支援などの支援機関について相談する
未就学の子どもの発達について継続的な困りごとがある場合は、自治体の発達相談窓口や保健センター、医療機関などへ相談できます。
必要に応じて、児童発達支援などの障害児通所支援が選択肢になることもあります。
児童発達支援では、子どもの発達や特性、生活上の困りごとなどを踏まえながら、個別の支援計画に基づいて支援が行われます。
支援内容や利用までの手続きは、子どもの状況や自治体、事業所によって異なります。利用を検討する場合は、まず自治体の担当窓口などへ確認しましょう。
園や学校の先生に相談する
家庭で気になる様子がある場合は、保育園・幼稚園・学校などでの様子を聞いてみるのも一つの方法です。
「家では遊びを終える時に泣くことが多いのですが、園ではどうですか?」など、具体的な場面を伝えると情報を共有しやすくなります。
園ではどのような声かけで切り替えられているのか、どのような場面で難しくなりやすいのかを確認すると、家庭での対応を考えるヒントになることがあります。
家庭と園・学校で情報を共有しながら、子どもに合った方法を探していくことが大切です。
まとめ|子どもに合った方法で切り替えを支えよう
子どもが行動や気持ちを切り替えるのに時間がかかる理由は、一人ひとり異なります。
遊びに集中している、次の予定が分かりにくい、次にすることが苦手など、まずは子どもの様子を見ながら理由を考えてみましょう。
切り替えを助ける方法としては、気持ちを受け止める、事前に終わりを知らせる、一緒に最初の一歩を始める、できたことを具体的に伝えるといった声かけがあります。
また、言葉だけでは予定を理解しにくい場合には、タイマーや絵カード、スケジュール表などの視覚的な工夫が役立つこともあります。
どの方法が合うかには個人差があるため、一度でうまくいかなくても焦る必要はありません。家庭で無理なく続けられる方法から試してみましょう。
切り替えの難しさが強く、家庭や園・学校での生活に負担が生じている場合や、ほかにも発達面で気になることがある場合は、園・学校の先生や自治体の相談窓口、医療機関などに相談することも選択肢です。

