「授業中に落ち着きがない」と担任の先生から伝えられ、心配になっている保護者の方もいるでしょう。
授業中の落ち着きのなさには、学校生活への慣れ、周囲の刺激、授業内容、睡眠などの生活習慣、発達特性など、さまざまな背景が考えられます。
一つの行動だけで原因を決めつけることはできません。この記事では、考えられる背景や家庭でできる対応、学校との連携、相談先について解説します。
先生から「落ち着きがない」と言われたら、まず知っておきたいこと
先生から「落ち着きがない」と伝えられても、それだけで発達障害などを意味するわけではありません。
まずは「どの授業で」「どのようなときに」「どのくらいの頻度で」落ち着きにくい様子が見られるのかを確認してみましょう。
学校と家庭の様子を整理することで、子どもが困っている場面や必要なサポートを考えやすくなります。
1.授業中に小学生が落ち着きをなくす主な理由
授業中に落ち着きにくくなる背景は一つとは限りません。環境や生活習慣、授業との相性、発達特性など、複数の要因が重なっている場合もあります。
小学校の生活リズムや環境にまだ慣れていない
小学校では、幼稚園や保育園と比べて、決められた時間割に沿って活動したり、座って話を聞いたりする時間が増えます。
特に入学直後や進級直後は、新しい先生や友達、教室、時間割など、多くの変化があります。こうした環境の変化によって、一時的にそわそわしたり集中しにくくなったりする子どももいます。
いつから様子が変わったのかを振り返ることも、状況を整理する手がかりになります。
授業の内容が理解度と合っていない
授業内容と子どもの理解度が合っていないことも、集中しにくくなる背景の一つです。
内容がすでによく分かっていて手持ち無沙汰になっている場合もあれば、難しく感じて何をすればよいか分からなくなっている場合もあります。
「授業で分かりにくいところはある?」「どんな時間が大変?」など、責めない聞き方で本人の感じ方を確認してみるとよいでしょう。
教室内外の刺激が気になっている
教室には、ほかの子どもの動きや話し声、廊下の音、窓の外の様子、掲示物など、さまざまな刺激があります。
音や光、人の動きなどに敏感な子どもの場合、周囲の刺激が気になり、授業へ注意を向け続けることが難しい場合があります。
本人の努力不足やわがままと決めつけず、「どのような環境なら過ごしやすいか」という視点で考えることが大切です。
睡眠などの生活習慣が影響している
睡眠不足や生活リズムの乱れがあると、日中に眠気が出たり、集中しにくくなったりすることがあります。
就寝時間や起床時間、朝の様子などを確認し、無理のない範囲で生活リズムを整えてみましょう。
十分に眠っているように見えても強い眠気が続く場合や、いびきなど睡眠について気になることがある場合は、小児科などへ相談する方法もあります。
2.発達特性が気になるときに確認したいポイント
「落ち着きがないのはADHDなのでは」と心配になる方もいるかもしれません。
ただし、授業中にそわそわする、席を立つといった一つの行動だけでADHDかどうかを判断することはできません。
ADHDには不注意や多動性・衝動性などの特徴がある
ADHD(注意欠如・多動症)では、不注意、多動性、衝動性などの特徴が見られます。
現れ方には個人差があり、不注意が目立つ子どももいれば、多動性や衝動性が目立つ子ども、複数の特徴が見られる子どももいます。
例えば、次のような様子が見られることがあります。
- 必要なことに注意を向け続けることが難しい
- 忘れ物や失くし物が多い
- じっとしていることが難しい場面がある
- 順番を待つことが難しい
- 相手の話が終わる前に話し始めることがある
ただし、これらはADHDのある子どもだけに見られる行動ではありません。当てはまる項目の数だけで判断しないことが大切です。
家庭と学校での様子を整理する
発達について相談するときは、「発達特性か、環境の問題か」と家庭だけで判断する必要はありません。
次のような点を記録しておくと、学校や専門機関へ相談するときに状況を伝えやすくなります。
- いつ頃から気になる様子があるか
- どの授業や活動で起こりやすいか
- 家庭ではどのような様子か
- 本人が困っていることはあるか
- どのような声かけや環境だと過ごしやすいか
発達特性がある場合でも、環境や活動内容によって行動の現れ方が変わることがあります。専門家はこうした情報も含めて総合的に判断します。
3.授業中に落ち着きがない小学生に家庭でできる対応策4選
学校での困りごとを家庭だけで解決しようとする必要はありませんが、家庭での関わり方を少し工夫することで、子どもが取り組みやすくなる場合があります。
1.指示を短く具体的に伝える
「ちゃんとして」「早くしなさい」といった抽象的な言葉では、何をすればよいのか分かりにくい子どももいます。
例えば、「算数のプリントを机に出そう」「まず5問やってみよう」のように、次にすることを具体的に伝えてみましょう。
一度に多くのことを伝えるのではなく、一つずつ伝える方法が合う場合もあります。
2.集中しやすい環境を整える
宿題をするときにテレビやおもちゃなどが気になっている場合は、机の上に今使うものだけを置くなど、刺激を少なくする工夫があります。
静かな場所が合う子どももいれば、完全に静かだとかえって落ち着かない子どももいます。本人の様子を見ながら、取り組みやすい環境を探してみましょう。
3.取り組みを小さく区切る
「宿題を全部終わらせよう」と考えると、取りかかること自体が負担になる子どももいます。
「まず5分やってみよう」「この3問までやって休憩しよう」など、小さな目標に分けると取り組みやすくなることがあります。
できたことを一緒に確認しながら、子どものペースに合わせて進めることが大切です。
4.できている行動を具体的に伝える
できていないことを繰り返し指摘されると、子どもが自信をなくしたり、取り組むこと自体を嫌がったりする場合があります。
「今日は自分からノートを出せたね」「5分間取り組めたね」のように、できた行動を具体的に伝えてみましょう。
いつも褒めなければならないわけではありません。できていることにも目を向けることがポイントです。
4.学校と連携してサポートする方法
授業中の困りごとは、家庭だけでは詳しい状況が分かりません。担任の先生などと情報を共有し、学校でどのような場面に困っているのか確認することが重要です。
担任の先生と具体的な状況を共有する
先生に相談するときは、「落ち着きがない」という言葉だけでなく、具体的な場面を確認してみましょう。
- どの授業で起こりやすいか
- 席を立つのか、話し続けるのか、ぼんやりするのか
- 一日の中で差があるか
- どのような声かけをすると取り組みやすいか
- 友達との関係で困っていることはないか
家庭でうまくいっている方法があれば、それも伝えると学校での支援を考える参考になります。
スクールカウンセラーなどに相談する
学校によっては、スクールカウンセラーなどの専門職へ相談できます。
スクールカウンセラーは、子ども本人だけでなく、保護者からの学校生活や子どもの様子についての相談に対応することもあります。
配置状況や相談できる曜日、予約方法は学校や地域によって異なります。利用したい場合は、担任や学校の相談窓口へ確認してみましょう。
一人で抱え込む前に知っておきたい外部の相談先
学校だけでなく、地域の相談窓口や医療機関へ相談することもできます。
「診断を受けるほどなのか分からない」という段階でも相談できる窓口があります。
発達や学校生活について相談できる主な窓口
- 市区町村の子育て・発達相談窓口:子どもの発達や子育てについて相談できます。
- こども家庭センター:設置されている地域では、子どもや家庭について幅広く相談できます。
- 発達障害者支援センター:発達障害や発達特性に関する相談や情報提供を行っています。
- 小児科などの医療機関:発達や行動、睡眠などについて医療的な確認が必要な場合に相談できます。
- 教育委員会や教育相談機関:学校生活や学習、行動などについて相談できる場合があります。
利用できる窓口や名称は自治体によって異なります。どこへ相談すればよいか分からない場合は、市区町村の子育て相談窓口などから確認するとよいでしょう。
相談するときは子どもの様子をメモしておく
相談方法は機関によって異なり、面談や聞き取り、必要に応じた検査、ほかの専門機関への紹介などが行われる場合があります。
相談するときは、学校や家庭で気になっていることを簡単にメモしておくと伝えやすくなります。
- 気になり始めた時期
- 学校から伝えられていること
- 家庭での様子
- 本人が困っていること
- これまで試した対応
最初から原因や診断名を決めて相談する必要はありません。「学校でこのような様子があり、どう対応すればよいか知りたい」と伝えるだけでも構いません。
必要に応じて放課後等デイサービスも選択肢になる
放課後等デイサービスは、学校などに就学している障害のある子どもに対し、授業終了後や休業日に必要な発達支援などを行う障害児通所支援です。
利用には、市区町村へ申請し、通所給付決定を受ける必要があります。
障害者手帳の有無だけで利用できるかどうかが決まるわけではありません。必要となる書類や手続きは自治体や子どもの状況によって異なるため、お住まいの市区町村へ確認しましょう。
支援内容は事業所によって異なる
放課後等デイサービスでは、子どもの発達段階や特性、本人や家族のニーズを踏まえて支援計画を作成します。
支援では、主に次の5つの領域を踏まえて、子ども一人ひとりに必要な内容が検討されます。
- 健康・生活
- 運動・感覚
- 認知・行動
- 言語・コミュニケーション
- 人間関係・社会性
具体的なプログラムは事業所によって異なります。遊びや集団活動、生活に関する練習などに加え、事業所によってはソーシャルスキルトレーニング(SST)を取り入れている場合もあります。
SSTを行っている事業所もある
SSTは、人との関わり方やコミュニケーションなどについて、具体的な場面を想定しながら練習する方法の一つです。
例えば、順番を待つ、困ったときに助けを求める、相手の話を聞く、自分の気持ちを伝えるなどを扱う場合があります。
ただし、SSTの実施方法や対象となる課題は事業所によって異なります。放課後等デイサービスを選ぶ際は、子どもの困りごとに合った支援を行っているか確認することが大切です。
授業中に落ち着きがない小学生への対応は原因を決めつけないことが大切
授業中の落ち着きのなさには、学校環境への慣れ、授業内容、周囲の刺激、生活習慣、発達特性など、さまざまな背景が考えられます。
一つの行動だけから原因を決めつけるのではなく、まずはどのような場面で困っているのかを確認してみましょう。
家庭では、指示を短くする、環境を整える、課題を小さく区切る、できていることを具体的に伝えるといった工夫を試すことができます。
気になる様子が続いている場合や、本人が学校生活で困っている場合は、担任の先生やスクールカウンセラー、地域の相談窓口、医療機関などへ相談することも選択肢です。
子どもの様子やペースに合わせながら、家庭だけで抱え込まず、学校や専門機関と一緒に必要なサポートを考えていきましょう。

