子どもがなかなか宿題を始めないと、保護者も疲れてしまいます。「もしかして発達障害なのでは」と不安になる方もいるでしょう。
ただし、宿題に取り組めない様子だけで、発達障害と判断することはできません。疲れや睡眠不足、課題の難しさ、学習方法との相性など、さまざまな原因が考えられます。
本記事では、子どもが宿題に取り組みにくい理由と、家庭で試せる工夫を解説します。発達特性との関係や、学校・地域の相談先についても確認していきましょう。
子どもが宿題できない原因は発達障害なのか
子どもが宿題をしないと、つい「怠けているのでは」と考えてしまうかもしれません。しかし、宿題に取り組めない背景は一人ひとり異なります。
発達特性が関係する場合もありますが、それだけが原因とは限りません。発達障害は、脳の働き方の違いにより、物事の捉え方や行動のパターンに違いがあり、日常生活に困難が生じる状態です。同じ診断名でも、特性の現れ方や困りごとは異なります。
甘えではなく特性や体調が影響する場合がある
宿題に取り組めないときは、本人のやる気だけで判断しないことが大切です。読む・書く・計算することに負担を感じていたり、注意を保ちにくかったりする場合があります。
学校生活の疲れや睡眠不足、不安などが影響している可能性もあるでしょう。一方で、発達障害のあるすべての子どもが宿題を苦手とするわけではありません。
まずは、どの課題や場面で困っているのかを確認します。「いつもできない」と考えるのではなく、時間帯・科目・宿題の量などを記録すると、原因を整理しやすくなります。
診断がなくても困りごとに合わせた工夫はできる
「グレーゾーン」という言葉は、発達特性が気になるものの、診断に至っていない状態などを表す際に使われることがあります。ただし、医学的な正式診断名ではありません。
また、診断の有無だけで、困りごとの大きさが決まるわけではありません。診断がなくても、課題を分ける、時間を短く区切るなどの工夫は取り入れられます。
宿題だけでなく、学校生活や家庭生活でも困りごとが続く場合は、担任やスクールカウンセラー、地域の相談窓口に相談してみましょう。
北九州市では、北九州市発達障害者支援センター「つばさ」が、発達障害のある本人や家族などからの相談に応じています。療育・就学・就労・福祉などについて助言を受けられる相談先の一つです。
宿題に取り組みにくい4つの理由|発達特性が関係する場合
子どもが宿題に取り組みにくい背景には、いくつかの理由が考えられます。発達特性が関係している場合もありますが、すべての子どもに当てはまるわけではありません。
ここでは、代表的な4つの理由を紹介します。
学校生活の疲れがたまっている
学校では、授業を聞く・友達と関わる・集団のルールに合わせるなど、多くの活動を行います。周囲の音や人の動きが気になりやすい子どもは、学校で疲れを感じやすい場合があります。
帰宅した時点で疲れていると、宿題を始める余力が残っていないこともあるでしょう。帰宅後すぐに宿題を始めさせるのではなく、休憩や軽食の時間を設ける方法があります。
ただし、長時間休むとかえって始めにくくなる場合もあります。子どもの様子を見ながら、休憩時間を調整してください。
何から始めるべきか見通しを持てない
宿題が複数あると、何から始めればよいか分からなくなる子どももいます。国語・算数・音読などの課題が重なると、全体の量に圧倒されることがあるためです。
このような場合は、取り組む順番を一緒に決めます。「最初に計算を5問する」「次に音読をする」など、行動を具体的に示すと分かりやすくなるでしょう。
ひとつの作業に集中し続けることが難しい
周囲の音や物に注意が向きやすく、宿題への集中が続きにくい場合があります。時計の音、テレビ、机の上のおもちゃなどが気になる子どももいるでしょう。
一方で、静かすぎる環境では落ち着かない子どももいます。大切なのは、子どもに合う環境を探すことです。
机の周りを整理する、テレビを消す、別の部屋で試すなど、少しずつ環境を調整しましょう。
学習そのものに強い苦手意識を持っている
間違いを何度も指摘された経験から、宿題を見るだけで不安になる子どももいます。「どうせできない」と感じている場合、問題を解く前から手が止まることもあるでしょう。
このようなときは、できなかった点だけを注意するのではなく、取り組めた部分を具体的に伝えます。「机に座れた」「1問読めた」など、小さな行動を認めることが大切です。
発達特性別に考える宿題でのつまずき
発達障害には、注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)、限局性学習症などがあります。同じ診断名でも、得意なことや苦手なことは異なります。
診断名だけで対応を決めず、本人がどの場面で困っているのかを確認しながら対応しましょう。
ADHDは注意を保ちにくい場合がある
ADHDは、日本語で「注意欠如・多動症」と呼ばれます。年齢や発達段階に比べて、注意を持続しにくい、待つことが苦手、落ち着いて行動しにくいといった特性が見られる場合があります。
宿題中にテレビの音や外の動きへ注意が向き、作業が止まる子どももいるでしょう。ただし、特性の現れ方には個人差があります。
短い時間に区切る、指示を一つずつ伝えるなどの工夫が考えられます。
ASDは見通しや手順を大切にする場合がある
ASDは、日本語で「自閉スペクトラム症」と呼ばれます。特定の物事への関心が強い、決まった手順を好む、感覚刺激に敏感などの特徴が見られる場合があります。
例えば、使う鉛筆や宿題を行う順番にこだわりがあると、予定が変わったときに始めにくくなることがあります。
予定や手順を事前に伝え、見通しを持てるようにすると、取り組みやすくなる場合があります。
限局性学習症では特定の学習に困難が見られることがある
「LD」は一般に学習障害を表す言葉として使われています。一方、医療分野では「限局性学習症」という名称が用いられます。
読む・書く・計算するなど、特定の学習面に大きな困難が見られることがあります。例えば、内容を口頭では理解できても、文字を読んだり書いたりすることに時間がかかる場合があります。
本人の努力不足と決めつけず、タブレットなどのICT機器の利用や課題量の調整について、学校へ相談することも選択肢です。
宿題に取り組みにくい子どもをサポートする家庭での工夫
家庭での工夫は、子どもの特性やその日の状態に合わせて行います。すべてを一度に取り入れる必要はありません。
取り組みやすそうな方法から試してみましょう。
気が散りにくい学習環境を作る
宿題を行う場所では、子どもの注意をそらす物を減らします。例えば、次のような方法があります。
- テレビや動画を消す
- 机の上を宿題に必要な物だけにする
- 家族の出入りが少ない場所を試す
ただし、落ち着ける環境は子どもによって異なります。完全に静かな場所がよいとは限りません。
いくつかの環境を試し、取り組みやすい場所を探してください。
タイマーを使って取り組む時間を区切る
宿題の終わりが見えないと、始めることに負担を感じる場合があります。「まず5分だけ取り組む」「3問終わったら休憩する」など、短い区切りを設けてみましょう。
タイマーの音が苦手な子どもには、残り時間を色などで確認できるタイマーや時計を使う方法もあります。
時間は子どもの集中できる長さに合わせ、無理に延ばさないことが大切です。
課題を小さく分けて取り組みやすくする
宿題の量が多い場合は、取り組む範囲を小さく分けます。漢字ドリル1ページではなく、「まず2行」などと示すと、始めやすくなることがあります。
終わった後は、「字が丁寧だったね」など、できた内容を具体的に伝えましょう。過度に褒める必要はありません。
本人が努力した点や工夫した点を認めることが大切です。
やることリストを視覚化する
言葉だけの説明では、順番を覚えにくい子どももいます。その場合は、紙やホワイトボードに予定を書き出してみましょう。
例えば、次のように示します。
- 休憩
- 計算プリント
- 音読
- 自由時間
終わった項目に印を付けると、残っている予定を確認できます。視覚的な提示が合わない子どももいるため、本人の反応を見ながら調整しましょう。
宿題に取り組みにくい子どもに対して避けたい行動
子どもが宿題を始めないと、保護者も焦ったり、イライラしたりすることがあります。しかし、強く叱るだけでは、困っている理由を解決できません。
まずは子どもの状態を確認しましょう。
無理やり机に向かわせる
腕を引っ張って座らせるなど、力ずくで宿題を始めさせることは避けましょう。本人が強い疲れや不安を感じているときは、学習への抵抗感がさらに強くなる可能性があります。
まずは落ち着ける時間を設け、「5分休んだら1問だけやってみる?」などと具体的に提案してください。
取り組めない状態が続く場合は、宿題の量や難易度が合っているか、学校へ相談することも考えましょう。
感情的に怒鳴りつける
大きな声で叱ると、子どもが萎縮し、話を聞き取りにくくなることがあります。保護者が感情的になりそうなときは、一度その場を離れてもかまいません。
落ち着いてから、「計算が難しいのか」「疲れているのか」など、困っている点を確認しましょう。指示を伝えるときは、短く具体的な言葉を使う方法があります。
周囲の子どもと比較する
兄弟や友達と比較する言葉は、子どもの自信を失わせる可能性があります。「お兄ちゃんはできた」「みんなは終わっている」ではなく、本人の以前の様子と比べましょう。
「昨日より早く始められた」「今日は自分で鉛筆を用意できた」など、小さな変化を伝えます。結果だけでなく、取り組むまでの過程を見ることが大切です。
宿題に取り組めない子どもの悩みを相談できる外部機関
家庭で工夫しても困りごとが続く場合は、学校や地域の相談機関を利用できます。
相談したからといって、すぐに診断や福祉サービスの利用が決まるわけではありません。まずは困っている状況を整理するために利用しましょう。
学校の担任に状況を伝える
家庭での様子を担任に伝え、学校での学習状況を確認します。子どもの状態に応じて、次のような相談が考えられます。
- 宿題の量や提出方法を調整できるか
- タブレットなど別の方法を使えるか
- 問題文の読み上げや補助が可能か
実際に行える配慮は、子どもの状態や学校の状況によって異なります。学校で必要な配慮については、本人や保護者、学校が話し合いながら内容を検討します。
地域の相談窓口を利用する
発達や学習について気になる場合は、自治体の相談窓口を利用できます。
北九州市では、北九州市発達障害者支援センター「つばさ」が、発達障害のある本人や家族などの相談に応じています。療育・就学・就労・福祉などについて助言を受けられる相談先です。
子どもの年齢や相談内容によって、適した窓口は異なります。どこへ相談すればよいか分からない場合は、区役所・学校・かかりつけの小児科などに相談先を確認しましょう。
発達支援を行う施設を活用する
子どもの状態によっては、放課後等デイサービスなどの障害児通所支援が選択肢になる場合があります。
放課後等デイサービスは、学校に就学している障害のある子どもなどを対象に、本人支援、家族支援、移行支援、地域支援・地域連携などを行う障害児通所支援です。
読み書きや生活習慣への支援を行う事業所もありますが、具体的な支援内容は事業所ごとに異なります。
宿題対応の有無だけでなく、支援方針・活動内容・職員体制なども確認しましょう。
子どもを支える放課後等デイサービスの利用手順
放課後等デイサービスは、希望すれば誰でも自由に利用できるサービスではありません。市町村が子どもの状態や支援の必要性などを確認し、障害児通所給付費の支給を決定します。
手続きや必要書類は自治体によって異なるため、居住地の担当窓口へ確認してください。
自治体の窓口で利用について相談する
まずは、区役所などの障害児通所支援を担当する窓口へ相談します。
北九州市では、各区役所の保健福祉課にある高齢者・障害者相談コーナーなどで、障害児通所支援の申請について確認できます。
診断名や障害者手帳の有無だけで利用の可否が決まるわけではありません。市町村が子どもの状態や支援の必要性などを確認したうえで、支給決定を行います。
申請に必要な書類や具体的な手続きについては、自治体の窓口で確認しましょう。
北九州市では、障害児通所支援を利用する場合、障害児支援利用計画の作成を障害児相談支援事業所に依頼する方法が基本です。相談支援事業所が見つからない場合や本人が希望する場合には、例外的に本人や家族などが作成するセルフプランを提出する方法もあります。
施設を見学して支援内容を確かめる
利用を検討する施設が見つかったら、可能であれば見学や相談を行いましょう。確認したいポイントは、次のとおりです。
- 子どもが安心して過ごせそうか
- 必要とする支援に対応しているか
- 宿題への対応方針はどうなっているか
- 活動内容や職員体制が合っているか
見学は制度上の必須手続きとは限りませんが、施設との相性を確認する方法の一つです。子ども本人の意見も聞きながら検討しましょう。
送迎サービスの有無と範囲を確認する
送迎サービスの有無は、事業所ごとに異なります。送迎を行っている場合でも、対象となる学校・地域・曜日・時間が限られることがあります。
また、送迎中の安全管理や、欠席・予定変更時の連絡方法も確認しておきましょう。
送迎だけで施設を決めるのではなく、支援内容や子どもとの相性を含めて比較することが大切です。
まとめ|宿題ができない理由を整理して必要な支援につなげよう
子どもが宿題に取り組めないからといって、発達障害とは限りません。学校生活の疲れ、課題の難しさ、見通しの持ちにくさ、集中の続きにくさなど、複数の原因が考えられます。
まずは、どの場面で困っているのかを整理しましょう。環境を調整する、課題を小さく分ける、時間を区切るなどの工夫もあります。
家庭だけで対応が難しい場合は、担任やスクールカウンセラー、地域の相談機関へ相談してください。
放課後等デイサービスは、支援の必要性などを踏まえて市町村の支給決定を受けた子どもが利用できる選択肢の一つです。宿題支援や送迎の有無は、事業所によって異なります。
診断名やサービス利用を急いで決めるのではなく、子どもの困りごとや希望に合った方法を一緒に探すことが大切です。

