「児童発達支援へ行くたびに子どもが泣いてしまう」「無理に離れることで、不安を強めてしまわないか」と悩む保護者は少なくありません。
乳幼児期には、保護者と離れる場面で不安を感じ、泣いたりしがみついたりすることがあります。ただし、泣くという行動だけで、愛着関係や子どもの発達状態を判断することはできません。
大切なのは、泣いたかどうかだけではなく、離れたあとに落ち着けるか、通所中に活動へ参加できるか、家庭生活に影響が出ていないかを確認することです。
この記事では、児童発達支援で保護者と離れる際に子どもが泣く理由や、家庭でできる対応のコツ、避けたい対応、相談を検討したい目安を解説します。
児童発達支援で保護者と離れる際に子どもが泣く理由
児童発達支援で子どもが泣く背景には、保護者と離れる不安、新しい環境への戸惑い、感覚の敏感さなど、さまざまな理由が考えられます。
一つの理由だけでなく、複数の要因が重なっている場合もあります。泣くことをすぐに問題行動と捉えず、子どもの様子や環境を丁寧に確認することが大切です。
保護者と離れることに不安を感じている
乳幼児期の子どもは、不安や緊張を感じたとき、安心できる保護者の近くにいたいと求めることがあります。そのため、保護者がその場を離れようとすると、泣いたりしがみついたりする場合があります。
愛着理論では、子どもが不安なときに安心を求める相手を「安全基地」と表現することがあります。ただし、分離時に泣くかどうかだけで、愛着関係の状態を判断することはできません。
新しい環境に戸惑っている
児童発達支援事業所は、子どもにとって慣れない場所であることがあります。初めて会う支援員、いつもと違う部屋、ほかの子どもの声などに戸惑い、不安が強くなることもあります。
大人には小さな変化に思えても、子どもにとっては大きな刺激になる場合があります。利用を始めて間もない時期は、場所や人、活動の流れを理解するまでに時間が必要なこともあります。
次に何が起こるか分からない
言葉による説明を理解することが難しい場合や、予定の変化に不安を感じやすい場合は、「保護者がいつ戻るのか」「このあと何をするのか」が分からず、泣いてしまうことがあります。
写真や絵、簡単な予定表などを使って、次の行動や迎えのタイミングを伝えると、見通しを持ちやすくなる場合があります。
音や光などの刺激を強く感じている
子どもによっては、人の声、照明、におい、人の多さなどの刺激を強く感じることがあります。慣れない環境の刺激と保護者から離れる不安が重なることで、泣き方が強くなる場合もあります。
特定の部屋や時間帯で泣きやすい場合は、環境の刺激が関係していないかを支援員と確認してみましょう。
疲れや空腹、体調不良が重なっている
睡眠不足、空腹、風邪の症状などがある日は、普段よりも気持ちを切り替えにくくなることがあります。
通所前の体調や睡眠、食事の様子を支援員へ伝えておくと、その日の状態に応じた対応を検討しやすくなります。
母子分離で泣くことはよくある反応だが、泣き方だけでは判断できない
保護者と離れる際に泣くことは、乳幼児期に見られることのある反応です。ただし、「泣いているから問題がない」「泣かないから愛着関係が弱い」と判断することはできません。
子どもの様子を考えるときは、次の点を確認することが重要です。
- 保護者と離れたあと、少しずつ落ち着けているか
- 支援員からの働きかけを受け入れられるか
- 好きな遊びや活動に参加できるか
- 回を重ねるなかで、反応に変化が見られるか
- 睡眠や食事など、家庭生活に大きな影響が出ていないか
泣く時間や慣れるまでの期間には個人差があります。ほかの子どもと比較せず、本人の変化を支援員と一緒に確認していきましょう。
児童発達支援の母子分離で見られる子どもの様子
大声で泣いたり体を動かしたりする
強い不安を感じると、大声で泣く、体を反らす、床に座り込む、足を動かすなどの様子が見られることがあります。
このような場合は、無理に言い聞かせ続けるのではなく、安全を確保したうえで、支援員と事前に決めた方法で引き継ぐことが大切です。
保護者にしがみついて離れない
保護者の服や手をつかみ、離れないようにする子どももいます。これは「離れたくない」「不安」という気持ちを、行動で伝えている可能性があります。
急に引き離すのではなく、「遊びが終わったら迎えに来るね」など、子どもが理解しやすい言葉で伝えましょう。具体的な対応方法は、子どもの状態に合わせて支援員と相談することが重要です。
通所の準備を嫌がる
自宅での着替えや外出準備の段階から泣いたり、「行かない」と訴えたりする場合もあります。
保護者と離れた経験を思い出しているほか、活動内容、送迎方法、音や人の多さなど、別の理由が隠れている可能性もあります。「行きたくない」という言葉だけを否定せず、どの場面で不安が強くなるのかを確認してみましょう。
母子分離で泣く子どもへの対応のコツ5選
1.支援員と子どもの様子を共有する
まずは、通所前、引き渡し時、保護者と離れたあと、迎えのときの様子を支援員と共有しましょう。
家庭と事業所で見せる姿が異なることもあります。保護者が帰ったあとに落ち着いて遊べているのか、通所中も不安が続いているのかによって、必要な対応は変わります。
事業所によっては、親子で過ごす時間を設ける、短い時間から利用する、別れの手順を統一するなどの方法を検討できる場合があります。
2.通所後の流れを分かりやすく伝える
「事業所へ行く」「保護者と別れる」「活動する」「迎えに来る」という流れを、子どもが理解しやすい方法で伝えます。
言葉だけでは理解しにくい場合は、写真、絵カード、予定表などを使う方法もあります。「あとで迎えに来る」ではなく、「おやつのあとに迎えに来る」など、本人が分かる出来事で説明すると伝わりやすくなる場合があります。
3.短く一貫した方法で別れる
別れの際は、毎回できるだけ同じ言葉や動作を使うと、子どもが流れを理解しやすくなります。
泣いているからといって何度も戻ったり、長時間説得を続けたりすると、別れのタイミングが分かりにくくなる場合があります。
ただし、すぐに離れる方法がすべての子どもに適しているわけではありません。どのように引き継ぐかは、支援員と事前に話し合っておきましょう。
4.黙っていなくならない
子どもが遊びに集中している間に、保護者が黙ってその場を離れると、姿が見えないことに気づいたときに不安が強まる場合があります。
「行ってくるね」「終わったら迎えに来るね」など、短い言葉で別れを伝えましょう。子どもが泣いた場合も、支援員と決めた手順に沿って行動することが大切です。
5.迎えのあとは結果ではなく取り組みをねぎらう
迎えのあとは、「泣かなかったから偉い」と評価するのではなく、「今日も来られたね」「先生と遊んだんだね」など、実際にできたことを具体的に伝えましょう。
抱きしめられることを好む子どもには、本人が求める範囲で触れ合う方法もあります。一方で、身体に触れられることを苦手とする子どもには、無理にスキンシップを求めないようにしましょう。
母子分離の際に避けたい対応
泣くことを叱る
「泣かないの」「もう大きいでしょう」と叱ると、不安な気持ちを表現しにくくなる可能性があります。
泣くこと自体を止めさせようとするのではなく、「離れるのが不安なんだね」と気持ちを短く受け止めましょう。
怖がらせる言葉を使う
「泣くと置いていくよ」「先生に怒られるよ」など、子どもを怖がらせる言葉は避けましょう。事業所や支援員に対する不安を強める可能性があります。
ほかの子どもと比較する
「ほかの子は泣いていない」と比較しても、不安が小さくなるとは限りません。子どもによって、環境に慣れるまでの時間や気持ちの表し方は異なります。
毎回異なる対応をする
ある日はすぐに離れ、別の日は長く付き添うなど、対応が大きく変わると、子どもが見通しを持ちにくくなることがあります。
家庭だけで判断せず、支援員と相談して、できる範囲で対応をそろえましょう。
泣いていても状況を確認せずに預け続ける
母子分離は、必ず続ければよいというものではありません。激しい不安が長く続く、通所中も落ち着かない、体調に変化が出るといった場合は、支援方法や利用時間、環境が合っているかを見直す必要があります。
支援員や専門機関への相談を検討したい目安
母子分離時に泣くことだけで、直ちに問題があるとは限りません。ただし、次のような状態がある場合は、早めに支援員へ相談しましょう。
- 通所を重ねても不安が強くなっている
- 保護者と離れたあとも長時間落ち着けない
- 通所前後に腹痛や頭痛などを繰り返し訴える
- 睡眠や食事など、家庭生活に大きな変化が出ている
- 自分や周囲を傷つける危険のある行動が見られる
- 特定の人や場所を極端に怖がるなど、気になる変化がある
- 保護者の不安や負担が強く、日常生活に影響している
必要に応じて、かかりつけの小児科、発達相談を行う医療機関、市区町村のこども家庭センター、地域子育て相談機関などへ相談する方法もあります。相談窓口の名称や対応内容は、自治体によって異なります。
母子分離に悩む保護者自身のケア方法
自分だけを責めない
子どもが泣く姿を見ると、「利用を始めるのが早かったのではないか」「無理をさせているのではないか」と悩むことがあります。
しかし、保護者だけで正解を決める必要はありません。子どもの様子を支援員と共有し、現在の利用方法が合っているかを一緒に確認することが大切です。
同じ悩みを持つ保護者と話す
保護者同士で経験を共有することで、気持ちが整理されることがあります。ただし、ほかの子どもの経過がそのまま我が子に当てはまるとは限りません。
参考にしながらも、最終的には本人の様子に合った方法を検討しましょう。
支援員や相談機関を利用する
保護者の不安が強い場合も、支援員へ相談して問題ありません。児童発達支援には、子ども本人への支援だけでなく、家族が安心して子育てを行うための家族支援という役割もあります。
一人で抱え込まず、事業所や地域の相談機関と情報を共有しましょう。
まとめ|泣くことだけで判断せず子どもの様子に合わせて対応しよう
児童発達支援で保護者と離れる際に泣くことは、乳幼児期に見られることのある反応です。ただし、泣くことだけで愛着関係や発達状態を判断することはできません。
大切なのは、保護者と離れたあとに落ち着けるか、活動に参加できるか、家庭生活に影響が出ていないかを継続して確認することです。
家庭では、通所後の流れを分かりやすく伝え、黙っていなくならず、できるだけ一貫した方法で別れましょう。具体的な方法は、子どもの状態や事業所の方針によって異なるため、支援員と相談しながら調整する必要があります。
不安が長く続く場合や生活への影響が見られる場合は、支援員、かかりつけの小児科、市区町村の相談機関などに相談し、子どものペースに合った対応を検討しましょう。

