「働きたいけれど、どこに相談すればよいのか分からない」と悩んでいませんか。
発達障害の診断を受けている方や、働くうえで困難を感じている方が利用できる支援には、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、就労選択支援などがあります。また、一般企業で障害者雇用枠を利用して働く方法もあります。
ただし、診断名だけで適した支援が決まるわけではありません。現在の体調、生活リズム、得意不得意、希望する働き方、必要な支援の量によって、選択肢は変わります。
この記事では、発達障害のある方が利用を検討できる就労支援の特徴と、自分に合った支援を選ぶための考え方、相談から利用までの流れを解説します。
発達障害と就労支援の基本
障害者手帳がなくても相談や利用ができる場合がある
就労移行支援や就労継続支援A型・B型などの障害福祉サービスは、障害者手帳を持っている方だけを対象としたものではありません。
発達障害の診断や障害の状態を確認できる診断書などにより、手帳がなくても対象になる場合があります。ただし、必要な書類や確認方法は自治体によって異なり、最終的には市区町村が本人の状況を踏まえて利用の可否を決定します。
診断を受けていない段階でも、発達障害者支援センター、ハローワーク、地域障害者職業センターなどに仕事上の困りごとを相談できる場合があります。障害福祉サービスの利用を希望する場合は、医療機関への相談が必要になることもあります。
障害者雇用枠では手帳が必要になることが多い
一般企業の障害者雇用枠では、求人の応募条件として障害者手帳の所持を求められることが一般的です。
発達障害を理由に精神障害者として法定雇用率の算定対象になるには、現行制度では原則として精神障害者保健福祉手帳が必要です。応募できる条件は求人ごとに異なるため、求人票やハローワークで確認しましょう。
一方、職場における合理的配慮の対象は、障害者手帳を持っている方だけに限定されません。障害によって職業生活に困難があり、配慮を必要としている場合は、本人と事業主が話し合いながら対応を検討します。
発達障害による困りごとの現れ方には個人差がある
発達障害には、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、限局性学習症(学習障害)などがあります。
職場では、口頭の指示を整理しにくい、作業の優先順位を決めにくい、時間管理が難しい、音や光が気になる、急な予定変更に対応しにくいといった困りごとが生じることがあります。
ただし、特性の現れ方や働きやすい環境は一人ひとり異なります。同じ診断名であっても必要な配慮は同じとは限らないため、診断名だけで利用先を決めないことが大切です。
発達障害のある方が検討できる就労支援
就労選択支援|自分に合う働き方を整理する
就労選択支援は、本人が就労先や働き方について、より納得できる選択をするための障害福祉サービスです。2025年10月から開始されました。
作業体験や面談などを通して、本人の希望、得意なこと、苦手なこと、働くうえで必要な配慮や支援を整理します。支援者が一方的に進路を決めたり、就労できるかどうかを判定したりする制度ではありません。
2025年10月以降、新たに就労継続支援B型を利用する方のうち、一定の条件に該当する方は、原則として利用前に就労選択支援を受けます。
ただし、50歳以上の方、障害基礎年金1級を受給している方、一定の就労経験があり年齢や体力の面から一般企業で働くことが難しくなった方などは、事前利用の対象外になる場合があります。また、地域に就労選択支援事業所がない場合などは、別の方法でアセスメントを行えることがあります。
対象となるか分からない場合は、市区町村の障害福祉担当窓口や相談支援事業所に確認しましょう。
就労移行支援|一般企業への就職を目指す
就労移行支援は、一般企業への就職を希望する障害のある方に対し、就労に必要な知識や能力の向上、求職活動、職場探し、就職後の定着などを支援するサービスです。
主な支援内容には、次のようなものがあります。
- パソコンや事務作業などの職業訓練
- コミュニケーションや報告・連絡・相談の練習
- 生活リズムや通所習慣を整えるための支援
- 自己理解や必要な配慮の整理
- 履歴書作成や面接練習
- 職場見学や職場実習
- 就職後の職場定着に向けた相談
対象は、原則として65歳未満で、一般企業への就職を希望し、適切な支援によって就労が見込まれる方です。
65歳以降も継続利用できる場合がありますが、65歳に達する前の一定期間に継続して障害福祉サービスの支給決定を受けていたことなど、複数の条件があります。詳細は市区町村に確認が必要です。
標準利用期間は24か月です。市町村審査会の個別審査により、引き続き利用する必要性が認められた場合は、最大1年間更新できることがあります。
通所日数や1日の利用時間は事業所や支援計画によって異なります。最初から毎日通うことが難しい場合は、対応できる通所ペースを事業所に確認しましょう。
就労継続支援A型|雇用契約を結んで働く
就労継続支援A型は、一般企業で働くことが難しい方が、事業所と雇用契約を結び、支援を受けながら働く障害福祉サービスです。
雇用契約を結ぶため、労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令が適用され、原則として最低賃金が適用されます。
A型では、事業所が定める勤務日数や勤務時間、仕事内容に基づいて働きます。本人の希望や状態が考慮されることはありますが、希望した条件がすべて認められるとは限りません。
また、A型は雇用契約を結ぶサービスであるため、事業所による採用選考があります。利用を希望しても、必ず採用されるわけではありません。
事業所を選ぶときは、次の点を確認しましょう。
- 仕事内容が自分に合っているか
- 勤務日数と勤務時間に無理がないか
- 給与や交通費などの労働条件
- 職場の音、明るさ、人数などの環境
- 困ったときの相談方法
- 見学や実習を実施しているか
就労継続支援B型|雇用契約を結ばず生産活動に取り組む
就労継続支援B型は、一般企業や雇用契約に基づく就労が難しい方に、就労や生産活動の機会を提供し、働くために必要な知識や能力の向上・維持を支援する障害福祉サービスです。
事業所とは雇用契約を結ばず、生産活動によって得られた収入などから「工賃」が支払われます。工賃は給与とは異なり、金額は事業所の生産活動や利用状況などによって異なります。
通所日数、利用時間、作業量は、本人の状態や個別支援計画、事業所の運営方針などを踏まえて決まります。週に少ない日数から相談できる事業所もありますが、すべての事業所が対応しているわけではありません。
作業内容には、軽作業、パソコン作業、清掃、農作業、手工芸、食品加工などがあります。得意な作業や集中しやすい環境がある方もいるため、作業内容だけでなく、音や人の多さ、休憩方法、支援員への相談のしやすさも確認しましょう。
障害者雇用枠|配慮を相談しながら一般企業で働く
障害者雇用枠は、一般企業が障害のある方を対象として募集する求人に応募し、企業と雇用契約を結んで働く方法です。
発達障害を理由に障害者雇用枠へ応募する場合は、精神障害者保健福祉手帳などの提示を求められることが一般的です。必要な手帳や応募条件は求人ごとに確認してください。
雇用分野では、障害者雇用促進法により、事業主には障害を理由とする差別の禁止と合理的配慮の提供が義務付けられています。
合理的配慮の例には、次のようなものがあります。
- 指示を口頭だけでなく文書でも伝える
- 業務の手順や優先順位を明確にする
- 相談担当者を決める
- 音や光などの職場環境を可能な範囲で調整する
- 定期的な面談の機会を設ける
合理的配慮の内容は、本人の困りごとや職場の状況によって異なります。希望した対応がそのまま提供されるとは限らず、本人と事業主が話し合い、過重な負担にならない範囲で対応を検討します。
自分に合った就労支援を選ぶ4つの軸
1.体調と体力
まず、どの程度の時間や日数なら無理なく活動できるかを整理します。
- 決まった時間に起きられるか
- 通所や通勤にどの程度の負担があるか
- 週に何日程度なら継続できそうか
- 活動した翌日に強い疲れが残らないか
現在できていることを基準に考え、無理を前提とした計画にしないことが大切です。
2.希望する働き方
一般企業への就職を目指したいのか、支援のある環境で雇用契約を結んで働きたいのか、まずは生産活動に取り組みたいのかによって、検討するサービスが変わります。
希望がはっきりしていない場合は、就労選択支援や相談機関を利用し、実際の作業体験などを通じて整理する方法があります。
3.得意な作業と苦手な環境
仕事の種類だけでなく、作業環境との相性も確認しましょう。
- 一人で集中する作業と共同作業のどちらが取り組みやすいか
- 口頭と文書のどちらで指示を受けると分かりやすいか
- 音、光、におい、人の多さなどで負担を感じるか
- 予定変更への対応にどの程度の支援が必要か
苦手なことだけでなく、得意なことや工夫すればできることも整理しておくと、必要な配慮を伝えやすくなります。
4.必要な支援の量
仕事を続けるうえで、どのような支援が必要かを考えます。
- 作業手順の確認が必要か
- 定期的な面談が必要か
- 体調や生活面の相談も必要か
- 応募書類や面接の支援が必要か
- 就職後も支援機関との連携が必要か
必要な支援を受けることは、本人の努力不足を意味するものではありません。安定して働くための方法として整理しましょう。
就労支援を選ぶときに誤解しやすいこと
B型を利用したら、ずっとB型に通うとは限らない
一度選んだ支援を生涯利用し続けなければならないわけではありません。
B型を利用しながら体調や働く力が変化した場合は、本人の希望に応じてA型、就労移行支援、一般就労などを検討できます。ただし、別のサービスを利用する際は、それぞれの対象要件、自治体の支給決定、事業所の選考などがあります。
反対に、現在利用しているサービスの負担が大きい場合は、通所日数や支援内容を見直したり、別の支援を検討したりすることも選択肢です。
B型は一般就労より劣る働き方ではない
就労移行支援、A型、B型、一般就労には、それぞれ異なる役割があります。どの働き方が一律に優れているというものではありません。
一般就労への移行だけを基準にせず、本人が安定して活動を続けられるか、希望する生活につながっているかという視点も大切です。
就労移行支援を利用しなければ就職できないわけではない
就労移行支援を利用せず、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの支援を受けながら就職を目指す方法もあります。
一方、自己理解、職業訓練、応募準備、職場実習などをまとめて受けたい方にとっては、就労移行支援が選択肢になります。
障害福祉サービスを利用するまでの流れ
1.相談窓口で現在の状況を伝える
就労支援の選択に迷ったときは、次のような窓口に相談できます。
- 市区町村の障害福祉担当窓口
- 相談支援事業所
- ハローワークの障害者向け相談窓口
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
- 発達障害者支援センター
窓口によって担当する内容が異なるため、相談内容に応じて別の機関を案内される場合があります。
2.事業所を見学する
就労移行支援、A型、B型などを検討するときは、複数の事業所を比較することが大切です。
見学時には、次の点を確認しましょう。
- 作業や訓練の内容
- 通所日数や利用時間
- 職員への相談のしやすさ
- 事業所内の音、光、広さ、人の多さ
- 休憩の取り方
- 送迎や交通手段
- 見学後に体験や実習ができるか
ホームページやパンフレットだけでは分からない環境もあるため、実際に足を運んで確認することが重要です。
3.市区町村へ利用申請をする
就労移行支援、就労選択支援、就労継続支援A型・B型などを利用するには、市区町村による支給決定と障害福祉サービス受給者証が必要です。
一般的には、次のような流れで進みます。
- 市区町村の窓口に相談・申請する
- 本人の状態や利用希望について確認を受ける
- 必要に応じて診断書などを提出する
- サービス等利用計画案またはセルフプランを作成する
- 市区町村が支給内容を決定する
- 受給者証の交付を受ける
- 利用する事業所と契約する
必要書類、手続きの順番、セルフプランの取り扱いは自治体によって異なります。申請から利用開始までにかかる期間も一律ではないため、早めに窓口へ確認しましょう。
まとめ
発達障害のある方が就労支援を選ぶときは、診断名だけでなく、現在の体調、生活リズム、得意不得意、希望する働き方、必要な支援の量を整理することが大切です。
一般企業への就職を目指す就労移行支援、雇用契約を結んで働くA型、雇用契約を結ばず生産活動に取り組むB型、働き方を整理する就労選択支援には、それぞれ異なる役割があります。障害者雇用枠を利用して、合理的配慮を相談しながら一般企業で働く方法もあります。
どの選択肢が一律に優れているというものではありません。現在の状態や希望が変われば、利用する支援を見直すこともできます。最初から一つに決めようとせず、相談、見学、体験などを通して、自分に合う環境を確認しながら進めましょう。

