幼児の発達障害のサインとは?気になる行動の見方と相談先を解説

児童発達支援

「言葉がなかなか出ない」「名前を呼んでも振り向かない」「目が合いにくい」など、お子さんの発達について不安を感じていませんか。

幼児期は発達の個人差が大きく、気になる行動があるからといって、すぐに発達障害と判断できるわけではありません。同じ行動でも、年齢、発達段階、体調、周囲の環境などによって意味が異なります。

一方で、気になる様子が長く続いている場合や、本人や家族が生活の中で困っている場合は、早めに相談することで、お子さんに合った関わり方や環境を考えやすくなることがあります。

この記事では、1歳から3歳頃に見られる発達の気になるサイン、確認したいポイント、相談前の準備、主な相談先について解説します。

幼児期の発達障害について知っておきたい基礎知識

発達障害は、脳の働き方の違いによって、物事の受け止め方や行動のパターンなどに特徴が見られ、生活上の困りごとにつながっている状態です。

特性の現れ方や程度は一人ひとり異なります。また、複数の特性が重なって見られることもあります。家庭での様子だけを見て判断するのではなく、これまでの発達の経過や、園など家庭以外の場面での様子も含めて確認することが大切です。

ASD(自閉スペクトラム症)の特性

ASDでは、言葉、視線、表情、身振りなどを使った相互的なコミュニケーションや、興味・行動のパターンに特徴が見られる場合があります。

幼児期には、次のような様子が見られることがあります。

  • 言葉の発達がゆっくりしている
  • 視線や身振りを使ったやり取りが少ない
  • 特定の遊びや物に強い関心を示す
  • 予定や手順が変わると強く戸惑う
  • 音、光、におい、触感などに敏感な様子がある

ただし、これらの様子が一つ見られるだけでは、ASDかどうかは判断できません。行動が続く期間や頻度、複数の場面で見られるか、生活上の困りごとにつながっているかなどを総合的に確認します。

ADHD(注意欠如・多動症)の特性

ADHDでは、発達年齢から考えて、注意を持続すること、行動を待つこと、衝動を抑えることなどに難しさが見られる場合があります。

幼児期には、次のような様子が見られることがあります。

  • 座っている必要がある場面でも動き回る
  • 順番を待つことが難しい
  • 次々と別の遊びに気を取られる
  • 周囲を確認せず、急に走り出すことがある

幼児は年齢的に活発で、注意が移りやすいことも珍しくありません。家庭だけでなく、保育園や幼稚園など複数の場面で同じような様子が続き、本人や周囲が困っているかどうかを確認することが重要です。

飛び出しなど安全に関わる行動がある場合は、発達障害かどうかにかかわらず、環境を整えたうえで早めに相談しましょう。

限局性学習症(学習障害)の特性

限局性学習症は、全般的な知的発達には大きな遅れがないものの、読む、書く、計算するなど、特定の学習に持続的な困難が見られる状態です。LDと呼ばれることもあります。

読み書きや計算などの学習が本格的に始まってから困りごとが明確になることが多いため、1歳から3歳頃の様子だけで判断することは困難です。

絵本への興味が少ない、言葉を覚えるのがゆっくりしているといった様子だけで、限局性学習症と判断することはできません。言葉の理解や発音、聴こえ方などが気になる場合は、小児科や乳幼児健診などで相談しましょう。

1歳から3歳頃に見られる発達の気になるサイン

1歳から3歳頃は、言葉や運動、人との関わり方が大きく発達する時期です。そのため、周囲との違いが気になり始めることがあります。

ここで紹介する行動は、発達障害を診断するためのチェックリストではありません。相談するかどうかを考える際の参考として確認してください。

名前を呼んでも反応が少ない

名前を呼んでも振り向かない、声をかけても反応が少ないと感じることがあります。

  • 後ろから呼んでも反応しないことが多い
  • 何度声をかけても気づかないことがある
  • 特定の音には反応するが、人の声への反応が少ない

遊びに集中していて気づかないことは、どの子にもあります。一方で、普段から反応が少ない場合には、人への関心の向け方だけでなく、聴こえ方が関係している可能性もあります。

気になる状態が続く場合は、小児科、耳鼻咽喉科、乳幼児健診などで相談しましょう。

視線や身振りを使ったやり取りが少ない

目が合いにくいことだけでなく、指差しや表情、身振りなどを使ったやり取りが少ない場合もあります。

  • あやしても視線が合いにくい
  • 興味のある物を指差して共有することが少ない
  • 何かを求めるときに、相手を見ず物だけを見る
  • 大人の表情や身振りへの反応が少ない

視線の合わせ方には個人差があり、目を見ることを無理に求める必要はありません。視線だけでなく、声、表情、指差し、身振りなどを含めた全体的なコミュニケーションの様子を確認しましょう。

つま先歩きが長く続く

歩き始めの時期に、一時的につま先で歩くことはあります。ただし、つま先歩きが長く続く場合には、感覚の特徴、体の使い方の癖、筋肉や関節など、さまざまな要因が考えられます。

  • かかとをほとんど床につけずに歩く
  • 室内でも屋外でもつま先歩きが続く
  • 転びやすさや歩きにくさがある

つま先歩きだけで発達障害と判断することはできません。歩き方が長く続く場合や、痛み、転びやすさ、左右差などが気になる場合は、小児科や整形外科などで相談してください。

言葉の発達がゆっくりしている

言葉の発達には大きな個人差がありますが、次のような様子が続く場合は相談の目安になります。

  • 2歳頃になっても意味のある言葉がほとんど見られない
  • 簡単な言葉や指示を理解しているか分かりにくい
  • 言葉よりも、大人の手を取って欲しい物の場所まで動かすことが多い
  • 相手の言葉を繰り返すことが多く、やり取りが続きにくい

大人の手を道具のように使って要求を伝える行動は、「クレーン現象」と呼ばれることがあります。ただし、この行動だけで発達障害と判断することはできません。

言葉の遅れには、聴こえ方、言葉を理解する力、発音、コミュニケーションの発達などが関係する場合があります。気になる場合は、乳幼児健診や小児科などで相談しましょう。

特定の遊び方や手順に強くこだわる

子どもは誰でもお気に入りの遊びを繰り返します。そのため、同じ遊びを好むこと自体が問題というわけではありません。

次のような様子が強く、遊びや生活の切り替えが難しい場合は、記録しておくと相談時に役立ちます。

  • おもちゃを毎回同じ順序に並べる
  • 車輪など、物の一部分だけを長時間見続ける
  • 遊び方や順番が変わると強く混乱する
  • 特定の物や手順がないと次の行動に移りにくい

こだわりの有無だけでなく、変化したときの反応や、日常生活への影響を確認しましょう。

かんしゃくが強く対応が難しい

幼児期には、思い通りにならないと泣いたり怒ったりすることがあります。特にイヤイヤ期には、かんしゃくが増えることも珍しくありません。

かんしゃくの背景には、言葉で気持ちを伝えにくいこと、疲れ、空腹、刺激への敏感さ、予定の変化など、さまざまな要因が考えられます。

  • 小さな変化でも長時間泣き続ける
  • 家庭や園でかんしゃくが頻繁に起こる
  • 落ち着くまでに長い時間がかかる
  • 頭を壁に打ちつけるなど、自分を傷つける行動がある

けがの危険がある場合や、家庭だけでは安全を確保できない場合は、早めに小児科や地域の相談窓口へ連絡してください。強く頭を打った場合などは、けがの状態に応じて速やかに医療機関を受診しましょう。

発達の特性か個性かを考えるときのポイント

家庭だけで、発達障害か個性かを明確に見分けることはできません。診断名の有無だけに注目するのではなく、子どもがどのような場面で困っているかを整理することが大切です。

行動の頻度や続いている期間を確認する

一時的に見られただけなのか、数週間から数か月にわたって続いているのかを確認します。

寝不足、体調不良、引っ越し、入園などの環境変化によって、一時的に行動が変わる場合もあります。

家庭以外の場面での様子を確認する

家庭では気になる様子があっても、保育園や幼稚園では見られないことがあります。反対に、家庭では目立たず、集団生活で困りごとが分かる場合もあります。

園の先生などに、次のような点を確認してみましょう。

  • 集団活動への参加の様子
  • ほかの子どもとの関わり方
  • 食事や着替えなど身の回りの行動
  • 予定変更や活動の切り替えへの反応

本人や家族への影響を確認する

診断の有無にかかわらず、本人や家族が生活の中で強く困っている場合は、相談や支援を検討する目安になります。

  • 集団生活に参加することが難しい
  • 飛び出しや自傷行動など、安全面の心配がある
  • 睡眠や食事の問題が長く続いている
  • 保護者の負担が大きく、家庭だけでの対応が難しい

困りごとがあるから発達障害、困っていないから個性と単純に分けることはできません。専門家は、発達の経過や生活状況などを含めて総合的に確認します。

相談前に家庭で整理しておきたいこと

気になる行動を記録する

相談前に、お子さんの様子を簡単に記録しておくと、医師や保健師などに状況を伝えやすくなります。

  • どのような行動があったか
  • いつ、どこで起きたか
  • どのくらいの頻度で起きているか
  • どのくらい続いたか
  • 行動の前に何があったか
  • どのようにすると落ち着いたか

毎日詳しく記録する必要はありません。気になった場面を箇条書きで残したり、母子健康手帳にメモしたりするだけでも役立ちます。

園での様子を確認する

保育園や幼稚園に通っている場合は、家庭以外での様子も聞いておきましょう。

「発達障害だと思いますか」と尋ねるのではなく、「活動の切り替えはできていますか」「友達とのやり取りで困っている様子はありますか」など、具体的に尋ねると状況を整理しやすくなります。

不安を一人で抱え込まない

子どもの発達について悩み続けると、保護者自身の心身にも負担がかかることがあります。

パートナーや家族、園の先生、地域の保健師など、話しやすい人に現在の不安を伝えてみましょう。自治体によっては、電話相談やオンライン相談などを設けている場合もあります。

インターネット上の体験談は参考になる一方で、子どもの状態は一人ひとり異なります。体験談だけで判断せず、公的な相談窓口や専門家の意見も活用することが大切です。

幼児の発達が気になるときの相談先

乳幼児健診や市区町村の相談窓口

1歳6か月児健診と3歳児健診は、身体の発育だけでなく、運動や言葉の発達、生活習慣、視覚や聴力などを確認する機会です。

健診の時期を待たずに相談したい場合は、市区町村の母子保健担当課や保健センターに問い合わせる方法があります。

相談方法、費用、予約の要否、利用できる専門相談などは自治体によって異なります。自治体のホームページや窓口で確認してください。

かかりつけの小児科

かかりつけの小児科では、発達の経過だけでなく、聴こえ方、体の動き、睡眠、食事などについて相談できます。

相談内容によっては、発達を専門とする医療機関、耳鼻咽喉科、整形外科などを案内される場合があります。

受診時には、気になる行動のメモや母子健康手帳、園から聞いた様子などを持参すると、状況を伝えやすくなります。

児童発達支援センター

児童発達支援センターは、地域の障害児支援の中核を担い、子どもの発達支援や家族への相談支援などを行う機関です。

ただし、直接相談できるか、市区町村の窓口を通す必要があるか、見学や相談をどのように申し込むかは地域によって異なります。

利用を検討する場合は、市区町村の障害児支援担当窓口や、地域の児童発達支援センターに確認しましょう。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、都道府県や指定都市に設置され、発達に関する相談支援や情報提供などを行っています。

幼児の相談に対応しているか、どの地域を担当しているかはセンターによって異なるため、事前に確認してください。

早めに相談することで期待できること

子どもの行動の背景を考えやすくなる

専門家に相談することで、子どもの行動を「困った行動」として捉えるだけでなく、どのような場面で困りやすいのか、何を伝えようとしているのかを整理できることがあります。

子どもの状態によっては、絵や写真を使って予定を伝える、指示を短く具体的にする、刺激の少ない場所を用意するなどの工夫が提案される場合があります。

生活しやすい環境を考えられる

発達支援では、子ども自身に行動の変化を求めるだけでなく、周囲の伝え方や環境を調整することも重視されます。

例えば、予定を事前に伝える、活動を小さな手順に分ける、音や光などの刺激を調整するといった工夫があります。

どの方法が合うかは子どもによって異なります。専門家と相談しながら、無理のない範囲で試すことが大切です。

保護者の負担を整理しやすくなる

相談は、発達障害かどうかを判断するためだけのものではありません。保護者が困っていることを伝え、家庭での関わり方や利用できる支援について一緒に考える機会でもあります。

適切な相談先につながることで、保護者が一人で対応を抱え込まずに済む場合があります。ただし、必要な支援や得られる変化には個人差があります。

まとめ|一つのサインだけで判断せず、気になる状態が続くときは相談しよう

名前を呼んでも反応が少ない、視線や身振りを使ったやり取りが少ない、言葉の発達がゆっくりしているといった様子は、発達について相談するきっかけの一つです。

ただし、一つの行動だけで発達障害かどうかを判断することはできません。年齢や発達段階、行動が続いている期間、家庭と園での様子、生活への影響などを総合的に確認する必要があります。

気になる状態が続いている場合や、安全面の心配、家庭だけでは対応しにくい困りごとがある場合は、乳幼児健診、市区町村の相談窓口、かかりつけの小児科などに相談しましょう。

早めに相談することは、診断を急ぐことではありません。お子さんの特徴を理解し、本人と家族が生活しやすい関わり方や環境を考えるための第一歩です。

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