子どものこだわりが強いのは発達障害?ASDの特性と家庭・療育でできる関わり方

児童発達支援

「靴を履く順番が違うと最初からやり直す」「いつもの道と違うと強く嫌がる」といった様子に、戸惑うことはありませんか。子どものこだわりの強さについて悩む保護者は少なくありません。

こうしたこだわりは、発達障害、特にASD(自閉スペクトラム症)の特性の一つとして現れることがあります。ただし、こだわりがあるだけでASDと判断できるわけではありません。また、行動の背景には、不安や感覚の特性、見通しの持ちにくさなど、さまざまな要因が関係している場合があります。

本記事では、子どものこだわりとASDの関係を整理し、家庭でできる関わり方を紹介します。児童発達支援や放課後等デイサービスなど、専門的な発達支援を利用する選択肢についても解説します。

子どもの「こだわりが強い」とはどんな様子?

子どものこだわりは、日常生活のさまざまな場面で現れることがあります。現れ方や程度には個人差があり、年齢や発達段階、生活環境によっても異なります。

よく見られる具体的な行動例

こだわりが強いと感じる子どもには、次のような行動が見られることがあります。

  • 着替えや通園ルートなど、決まった順番や手順を守りたがる
  • 物の置き場所や並べ方が変わることを強く嫌がる
  • 急な予定変更に戸惑ったり、強く混乱したりする
  • 特定の物・キャラクター・話題などに強い興味を示す
  • 思い通りにならないと、泣く、怒る、動けなくなるなどの反応を示す

これらの行動自体は、発達の過程で見られることもあります。一方で、本人が強く困っている場合や、家庭・園・学校などでの生活に大きな影響が出ている場合は、専門機関への相談を検討してもよいでしょう。

年齢によって現れ方が変わることもある

こだわりの対象や表現方法は、成長とともに変化することがあります。ただし、すべての子どもが同じような経過をたどるわけではありません。

幼児期には、「靴下を履く順番」「使うコップ」「物を置く位置」など、日常生活の具体的な手順や物へのこだわりが目立つことがあります。

就学後には、決まりやルール、特定の興味などに強い関心を示す子どももいます。たとえば、「予定通りに進まないと気になる」「決まりから外れることに強く戸惑う」といった様子が見られることがあります。

ただし、こだわりの内容や強さには大きな個人差があります。年齢だけで判断せず、本人がどのような場面で困っているのかを見ることが大切です。

こだわりの強さと発達障害(ASD)の関係

強いこだわりは、ASDの特性の一つとして見られることがあります。ただし、すべてのこだわりが発達障害に結びつくわけではありません。

ASD(自閉スペクトラム症)の特性としてのこだわり

ASDでは、社会的なコミュニケーションや対人関係の特徴とともに、限定された興味や反復的な行動、変化への対応の難しさなどが見られることがあります。

DSM-5-TRなどの診断基準でも、限定された反復的な行動・興味・活動はASDを判断する際の重要な項目の一つです。

具体的には、同じ動作を繰り返す、決まった手順を変えることを強く嫌がる、特定の対象に強い関心を示すなどの行動が見られる場合があります。

ただし、こだわりが強いという一点だけでASDと診断されるわけではありません。診断では、コミュニケーションや対人関係の特徴、行動の特徴、生活への影響、発達の経過などを含めて専門家が総合的に判断します。

こだわり=すべて発達障害ではない

こだわりが見られても、必ずしも発達障害とは限りません。幼児期には、自分で決めたい気持ちが強くなったり、決まった方法を好んだりすることもあります。

一般に「イヤイヤ期」と呼ばれる時期にも、特定の順番や方法に強くこだわる様子が見られる場合があります。ただし、現れ方や続く期間には個人差があります。

発達障害かどうかは、こだわりの有無だけでは判断できません。本人の困りごとや生活への影響、ほかの発達上の特徴なども含めて考える必要があります。

気になる状態が続いている場合は、保護者だけで判断せず、市区町村の発達相談窓口や医療機関などに相談するとよいでしょう。

こだわり以外に見られることがある特性

ASDでは、こだわり以外にもさまざまな特性が見られる場合があります。ただし、すべての子どもに同じ特徴が現れるわけではありません。

  • 言葉・視線・表情などを使った相互のコミュニケーションに難しさを感じる
  • 音・光・におい・触覚などに敏感だったり、反対に刺激を感じにくかったりする
  • 活動や場面を切り替えることに戸惑いやすい
  • 特定の興味や活動に強く集中する

こうした特徴によって本人や家族が困っている場合は、専門家に相談することで、その子に合った環境調整や関わり方を考えやすくなることがあります。

なぜ子どもはこだわる?背景にあること

こだわりのある行動は、「わがまま」や「周囲を困らせるための行動」とは限りません。行動の背景に、不安や感覚の特徴、予定を予測することの難しさなどが関係している場合があります。

たとえば、予定外の出来事や急な変更があると、次に何が起きるのか分からず不安を感じる子どもがいます。そのような場合、決まった順番や方法を繰り返すことが、安心につながっていることがあります。

言葉だけで伝えられた予定をイメージすることが難しい子どももいます。「あとで公園に行くよ」と言われても、「あと」がどのくらいなのか分かりにくい場合があります。

また、楽しく遊んでいる途中で突然「片付けよう」と言われると、気持ちの切り替えに時間が必要なこともあります。

このような場合は、こだわりそのものをなくそうとするより、何が不安や混乱につながっているのかを考え、本人が理解しやすい方法で見通しを伝えることが役立つ場合があります。

避けたい関わり方

こだわりが見られる子どもへの対応では、本人の不安や混乱を強めないことが大切です。

たとえば、次のような対応は避けた方がよい場合があります。

  • 理由を確認せず、力ずくでこだわりをやめさせる
  • 「わがまま」「甘え」と決めつけて叱る
  • 予定変更を可能な範囲で伝えず、突然切り替えを求める
  • 強く混乱している最中に長い説明や説教をする
  • ほかの子どもと比較して否定する

本人にとって大切な手順や予定を突然変えると、不安や混乱が強くなる場合があります。

まず安全を確保し、本人が落ち着いてから状況を確認することが大切です。すべてのこだわりに応じる必要はありませんが、なぜその行動が必要なのかを考えながら、無理のない範囲で調整していきましょう。

家庭でできる関わり方|3つのポイント

こだわりが見られる子どもへの関わりでは、事前の予告、選択肢、見通しの提示などが役立つことがあります。

ただし、合う方法は子どもによって異なります。本人の理解の仕方や反応を見ながら調整することが大切です。

①事前に予告する

活動を切り替える前に予告することで、気持ちの準備をしやすくなる子どもがいます。

たとえば、遊びから片付けへ移るときに「あと5分でお片付けだよ」と伝えたり、タイマーを使ったりする方法があります。

一日のスケジュールを絵カードや写真、文字などで示す方法もあります。

「朝ごはん→歯みがき→着替え→出発」といった流れを目で確認できるようにすると、次に何をするのか理解しやすくなる場合があります。

ただし、絵や写真、文字など、理解しやすい方法は子どもによって違います。本人に合う伝え方を探してみましょう。

②選択肢を用意する

自分で選べる場面を作ることで、納得して行動に移りやすくなる子どももいます。

たとえば、着る服で迷っている場合は、「赤いシャツと青いシャツ、どちらにする?」と、無理のない範囲で選択肢を示す方法があります。

すべての希望を受け入れることが難しい場合は、代わりの方法を提示することもできます。

「その順番は今日は難しいけれど、こちらならできるよ」といった形で、本人が受け入れられる方法を一緒に探してみましょう。

③見通しを伝える

予定変更や特別な出来事がある日は、可能な範囲で事前に知らせておくことが役立つ場合があります。

たとえば、雨で公園に行けなくなった場合は、「今日は雨だから公園には行かず、室内の遊び場に行くよ」と、変更内容と代わりの予定を具体的に伝えます。

「〇〇が終わったら△△をするよ」と順番を示す方法もあります。

予定変更のあとに本人が楽しみにできる活動がある場合は、それもあわせて伝えることで、変更を理解しやすくなることがあります。

ただし、実現できない予定を約束すると、かえって混乱につながることがあります。確実に実行できる内容を伝えることが大切です。

専門的なサポートを活用する|療育・発達支援という選択肢

家庭での工夫だけでなく、専門的な発達支援を活用する方法もあります。

一般に「療育」と呼ばれる支援は、現在の障害児支援では「発達支援」という言葉で表現されることも多くなっています。

療育・発達支援とは

発達支援は、子どもの障害や発達の状態、特性、生活上の困りごとなどを踏まえながら、本人の生活や育ちを支える取り組みです。

児童発達支援では、本人への支援だけでなく、家族への支援、保育所や学校などへの移行支援、地域の関係機関との連携なども含めて支援が行われます。

本人支援では、「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」という5つの領域を踏まえ、一人ひとりの状況に合わせた支援が検討されます。

こだわりが見られる場合も、単にその行動をなくすことを目的とするのではなく、本人が困っている背景を確認しながら、生活しやすい環境や伝え方を考えていくことが大切です。

児童発達支援

児童発達支援は、主に未就学の障害児のうち、発達支援の必要があると市区町村から認められた子どもが利用する障害児通所支援です。

利用にあたって、医学的な診断名や障害者手帳が必ず必要というわけではありません。子どもの状態や支援の必要性をもとに、市区町村が支給の可否を判断します。

支援内容は事業所や子どもの状況によって異なります。遊びや日常生活の活動などを通じ、一人ひとりのニーズに合わせた支援が行われます。

また、保護者への相談支援や、保育所・幼稚園など関係機関との連携が行われる場合もあります。

放課後等デイサービス

放課後等デイサービスは、学校などに就学している障害児のうち、授業終了後や休業日に支援が必要と認められた子どもが利用する障害児通所支援です。

主に学齢期の子どもが利用し、一人ひとりの発達の状況や特性、生活上のニーズに応じた発達支援が行われます。

本人への支援だけでなく、家族支援、学校や地域との連携、将来の生活を見据えた移行支援なども重要な役割です。

支援内容や特色は事業所によって異なります。学習、運動、創作活動、日常生活に関する活動など、さまざまな取り組みが行われています。

利用先を検討するときは、活動内容だけでなく、本人の状態に合った支援方針か、職員との相性、本人が安心して過ごせそうかなども確認するとよいでしょう。

利用開始までの一般的な流れ

児童発達支援や放課後等デイサービスなどの障害児通所支援を利用するには、原則として市区町村から支給決定を受け、通所受給者証の交付を受ける必要があります。

一般的な流れは次のとおりです。

  1. 市区町村の担当窓口へ相談・申請する
  2. 必要に応じて障害児支援利用計画案などを作成・提出する
  3. 市区町村による面接や利用意向などの確認を受ける
  4. 支給決定後、通所受給者証が交付される
  5. 利用する事業所と契約し、利用を開始する

実際の手続きや必要書類は自治体によって異なります。事業所の見学を申請前に行う場合もありますが、申請前に特定の事業所を必ず決めておかなければならないとは限りません。

まず市区町村の窓口で手続きを確認し、そのうえで事業所を見学すると進めやすいでしょう。

障害児通所支援の利用者負担は原則としてサービス費の1割で、世帯所得に応じて月ごとの負担上限額が設定されています。

また、児童発達支援などを利用する就学前の子どもについては、満3歳になった後の最初の4月1日から小学校入学まで、対象となるサービスの利用者負担が無償になる制度があります。食費や日用品費など、サービス利用料以外の費用は別途必要になる場合があります。

費用や申請書類、支給日数などは個別の状況や自治体によって異なるため、利用を検討する際は居住する市区町村に確認してください。

相談できる窓口

子どものこだわりについて気になることがある場合は、専門機関に相談する方法があります。

主な相談先としては、次のような機関があります。

  • 市区町村の子育て・発達相談窓口
  • 保健センター
  • 児童発達支援センター
  • 発達障害者支援センター
  • かかりつけの小児科や発達を専門とする医療機関
  • 地域によっては児童相談所などの相談機関

園や学校に通っている場合は、担任や園・学校の相談担当者に日頃の様子を共有する方法もあります。

どこへ相談すればよいか分からない場合は、まず市区町村の子育て・発達相談窓口や保健センターに確認すると、地域の相談機関を案内してもらえることがあります。

よくある質問(FAQ)

こだわりは成長とともになくなりますか?

こだわりの強さや現れ方は、成長や環境によって変化することがあります。ただし、完全になくなるかどうかには個人差があります。

幼児期には物や手順へのこだわりが目立ち、成長するとルールや特定の興味へのこだわりとして現れる子どももいます。一方で、年齢とともに柔軟に対応できる場面が増える場合もあります。

大切なのは、こだわりをすべてなくすことではなく、本人が困っている場面を減らし、生活しやすい方法を一緒に考えることです。

こだわりを認めると、わがままになりませんか?

子どもの気持ちや行動の背景を受け止めることと、すべての要求に応じることは同じではありません。

本人がなぜその方法を必要としているのかを考えながら、守れるルールと変更できる部分を分けていくことが大切です。

難しい要求には代わりの方法を示すなど、本人が理解しやすい形で折り合いをつけていきましょう。

診断がついていなくても療育・発達支援は受けられますか?

診断名がなくても、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの障害児通所支援を利用できる場合があります。

障害児通所支援の支給決定では、医学的な診断名や障害者手帳を持っていることは必須要件ではありません。市区町村が子どもの状態や支援の必要性を確認し、利用の可否を判断します。

確認に使われる書類や手続きは自治体や子どもの状況によって異なり、必要に応じて医師の診断書・意見書などを求められる場合もあります。

診断がない段階で利用を検討している場合は、まず居住する市区町村の障害児支援や発達相談の担当窓口に確認するとよいでしょう。

きょうだいへのフォローはどうしたらよいですか?

こだわりへの対応などに時間がかかる家庭では、きょうだいが寂しさや戸惑いを感じることもあります。

可能な範囲で一対一の時間を作ったり、きょうだいの話を聞いたりすることも大切です。

「あなたの気持ちも大切にしているよ」と伝えながら、家族それぞれが無理をしすぎない方法を考えていきましょう。

まとめ

子どもの強いこだわりは、発達障害、特にASDの特性の一つとして現れることがあります。ただし、こだわりがあるだけでASDと判断することはできません。

行動の背景には、変化への不安、見通しの持ちにくさ、感覚の特性などが関係している場合があります。

家庭での関わりでは、次の3つを意識すると役立つことがあります。

  • 活動を変える前に予告する
  • 無理のない範囲で選択肢を用意する
  • 予定や変更後の流れを分かりやすく伝える

ただし、どの方法が合うかは子どもによって異なります。本人の反応を見ながら、無理のない方法を探していくことが大切です。

家庭での対応だけでは困りごとが続く場合は、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの発達支援を利用する選択肢もあります。

本人や家族が困っている状態が続いている場合は、市区町村の発達相談窓口、保健センター、児童発達支援センター、医療機関などに相談し、その子に合った関わり方や支援を一緒に考えていきましょう。

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