お子さんの友達トラブルが続くと、「発達障害が関係しているのでは」と心配になることもあるでしょう。謝罪や学校とのやり取りが重なり、保護者が疲れてしまう場合もあります。
ただし、友達トラブルだけで発達障害と判断することはできません。発達段階・友達との相性・集団環境・疲れ・不安・言葉の発達など、さまざまな背景が考えられます。また、発達障害の特性や困り方は一人ひとり異なります。同じ診断名でも、得意なことや苦手な場面は同じではありません。
本記事では、発達特性が関係することもある友達トラブルの事例と、家庭や学校でできる対応を解説します。放課後等デイサービスを利用する場合の考え方も確認していきましょう。
子どもの友達トラブルが続くときに考えられる背景
友達とのトラブルが続く場合、発達特性が背景の一つになっていることがあります。しかし、特定の行動だけで発達障害と決めつけることはできません。まずは「どのような場面で起きたのか」「その前に何があったのか」を整理することが大切です。
気持ちを言葉にするまで時間がかかる
自分の気持ちや希望を、すぐに言葉で表すことが難しい子どももいます。例えば、嫌なことをされたときに「やめて」と言えず、相手を押してしまうことがあります。おもちゃを借りたいと伝えられず、手を伸ばして取ってしまうケースもあるでしょう。
行動だけを見ると、乱暴または自分勝手に感じられるかもしれません。しかし、何を伝えたかったのかを確認すると、必要な支援が見つかりやすくなります。「貸して」「やめて」「一緒に遊びたい」など、場面に合った言葉を一緒に練習する方法があります。
相手の意図や感情を読み取りにくい
表情・声の調子・遠回しな言葉から、相手の気持ちを読み取ることが難しい場合もあります。友達が困った顔をしていても、遊びを続けてしまうことがあるでしょう。また、冗談をそのまま受け取り、怒ったり不安になったりする子どももいます。
こうした行動は、相手を困らせようとしているとは限りません。「相手が後ろを向いたら休みたい合図かもしれない」など、目に見える手掛かりと意味を結び付けて伝えると、理解しやすくなることがあります。
遊びのルールや場面の変化に対応しにくい
複数のルールを同時に覚えることや、その場に応じて行動を変えることが難しい子どももいます。鬼ごっこで鬼が交代したことに気付かなかったり、自分が理解しているルールにこだわったりする場合があります。
ただし、ルールを守らない行動が、すべて発達特性によるものとは限りません。説明が分かりにくかった、ルールを覚えていなかった、負けることへの不安が強かったなどの可能性もあります。遊びを始める前に、短い言葉や絵でルールを確認すると参加しやすくなるでしょう。
気持ちを切り替えるまで時間がかかる
負けたときや予定が変わったときに、悔しさや不安が長く続くことがあります。ゲームに負けて強い言葉を言ったり、遊びを終えられず泣いたりする場合もあるでしょう。
疲れや空腹、周囲の騒がしさが重なると、気持ちが不安定になることもあります。その場ですぐに切り替えるよう求めるより、落ち着ける場所や時間を用意することが役立つ場合があります。落ち着いた後に、「次はどうしたらよいか」を一緒に考えることが大切です。
発達特性が関係することもある友達トラブルの具体例
ここからは、友達との間で起こりやすい事例を紹介します。これらの行動があるからといって、発達障害と判断できるわけではありません。子どもの置かれた環境や、行動の前後も含めて確認しましょう。
順番を待てずに喧嘩になる
ブランコや遊具の順番に割り込んだり、列に入ろうとして友達を押したりすることがあります。背景には、待つ時間が分からない、順番を忘れた、やりたい気持ちを抑えにくいなど、複数の理由が考えられるのです。
「あと何人で自分の番か」を見える形にすると、待ちやすくなる場合があります。順番カードやタイマーを使う方法も一つです。順番を待てたときには、「前の子が終わるまで待てたね」と、できた行動を具体的に伝えましょう。
距離が近くなり、相手が戸惑う
話すときに顔を近づけたり、相手の許可を得ずに触れたりすることがあります。本人は親しみを表しているつもりでも、相手が驚いたり不快に感じたりするかもしれません。
「触る前に聞く」「嫌だと言われたら離れる」など、具体的な行動として伝えることが重要です。人との距離は、相手や場面によって変わります。決まった距離だけを覚えさせるのではなく、相手の反応を見る練習も取り入れましょう。
悪気なく率直な言葉を伝えてしまう
感じたことをそのまま言葉にして、友達を傷つけてしまうことがあります。例えば、友達の作品に対して「上手ではない」と言ったり、外見について思ったことを口にしたりするケースです。
その場で強く叱るだけでは、何が問題だったのか分からない場合があります。「言わない」だけでなく、「頑張って描いたんだね」「ここが面白いね」など、別の伝え方を具体的に示すと理解しやすくなります。
特定の友達との関わりが強くなりすぎる
安心できる友達と、いつも一緒にいたいと感じる子どももいます。その友達が別の子と遊ぶと不安になり、何度も追いかけたり、遊ぶ相手を制限しようとしたりする場合があります。
「執着している」と決めつけるのではなく、離れることへの不安や、ほかの子への話しかけ方が分からない可能性を考えましょう。一人で過ごす活動や、別の友達と関わる短い機会を少しずつ増やす方法があります。
友達トラブルを減らすために家庭でできる対応
家庭では、行動を禁止するだけでなく、代わりにどう行動すればよいかを具体的に伝えることが大切です。伝え方は肯定的・具体的にし、必要に応じて絵や文字など目で見て分かる方法を取り入れると、理解しやすくなる場合があります。少しずつ練習することも一つの方法です。
適切な距離や関わり方を目で見える形で伝える
言葉だけで「近すぎる」と注意しても、どの程度離れればよいのか分からない場合があります。絵や人形を使い、話しかける位置を示す方法があります。家族と役割を交代しながら練習するのもよいでしょう。
「握手や抱きつく前には聞く」「嫌だと言われたらやめる」など、相手の意思を確認することも伝えます。練習した通りにできない日があっても、責める必要はありません。その日の体調や周囲の環境も確認しましょう。
遊ぶ前にルールと困ったときの行動を確認する
見通しがあると、安心して活動に参加しやすくなる子どももいます。遊ぶ前には、次のような約束を短くまとめましょう。
- おもちゃは順番に使う
- 困ったら押さずに大人を呼ぶ
- 時計の針が3になったら片付ける
「負けても怒らない」だけでは、悔しいときの行動が分かりません。「悔しいときは深呼吸する」「少し離れて休む」など、代わりの行動も一緒に決めておきましょう。
できた行動を具体的に伝える
望ましい行動ができたときは、何がよかったのかを具体的に伝えます。「偉いね」だけでなく、「順番が来るまで待てたね」「貸してと言えたね」と説明すると、次に取る行動が分かりやすくなります。
うまくいかなかったときは、子どもの話を聞いてから振り返りましょう。「誰が悪いか」だけで終わらせず、「次に同じことが起きたらどうするか」を一緒に考えることが大切です。
子どもが友達トラブルを起こしたときの周囲への対応
トラブルが起きたときは、家庭だけで抱え込まず、学校と情報を共有しましょう。子どもが相手を傷つけた可能性だけでなく、からかい、仲間外れ、行き違いがなかったかも確認する必要があります。
担任の先生と具体的な状況を共有する
担任の先生には、診断名だけでなく、困りやすい場面や有効だった対応を伝えましょう。例えば、「予定変更の前に伝えると落ち着きやすい」「口頭だけでなくメモがあると理解しやすい」などです。
家庭と学校で様子が異なることもあります。いつ・どこで・誰と・どのようなトラブルが起きているかを整理すると、背景を考えやすくなります。必要に応じて、学校内の相談担当者や関係機関との連携も検討しましょう。
相手の保護者への連絡方法を学校と相談する
学校で起きたトラブルについては、まず先生と事実関係を整理します。相手の保護者へ直接連絡すると、双方の認識が異なり、話が複雑になることもあります。学校の方針を確認し、どのように連絡するかを相談すると安心です。
謝罪する場合は、発達特性を言い訳として使わないように注意しましょう。相手が受けた影響について謝り、家庭や学校で考えている対応を簡潔に伝えることが大切です。
トラブルが続く場合は相談機関を利用する
同じトラブルが繰り返される場合は、学校・自治体の相談窓口・発達障害者支援センターなどへ相談できます。発達障害の診断は専門の医師が行うため、診断や医療的な評価を希望する場合は医療機関へ相談しましょう。
子どもが学校へ行きたがらない・眠れない・食欲が落ちたなどの変化がある場合も、状態によっては医療機関への相談が必要なことがあります。
北九州市には、各区役所の子ども・家庭相談コーナー、北九州市子ども総合センター、発達障害者支援センターなどの相談先があります。相談は、診断を付けることだけが目的ではありません。子どもが困っている場面と、必要な環境調整を整理する機会にもなります。
子どもの友達関係を支える放課後等デイサービスの役割
放課後等デイサービスは、学校に就学している障害のある子どもに対し、放課後や学校休業日に、個々のニーズに応じた発達支援を総合的に提供する障害児通所支援です。
こども家庭庁のガイドラインでは、子どもの個別のニーズを踏まえ、本人支援・家族支援・移行支援・地域支援・地域連携を総合的に提供する考え方が示されています。
活動を通じて人との関わり方を練習する
事業所によっては、ゲーム・工作・話し合いなどの活動を通じて、人との関わり方を練習します。順番を待つ、自分の意見を伝える、相手の話を聞くなど、取り組む内容は子どもの状況によって異なります。
集団活動が中心の事業所もあれば、個別の活動を組み合わせる事業所もあるでしょう。利用によって友達トラブルが必ず減るわけではありません。本人の困りごとに合った支援内容かを確認することが重要です。
一人ひとりのニーズに合わせて支援計画を作成する
放課後等デイサービスでは、子どもと保護者のニーズや課題、生活状況などを踏まえ、放課後等デイサービス計画(個別支援計画)を作成します。
ただし、「個別支援計画」があることと、職員と子どもが一対一で活動することは同じではありません。職員の資格や専門職の配置・プログラム・集団の人数は事業所によって異なります。利用を検討するときは、困りごとに合った活動があるか、学校や家庭と連携できるかなどを確認しましょう。
保護者への相談支援や関係機関との連携を行う
放課後等デイサービスでは、子ども本人だけでなく、家族への相談支援も重要な役割とされています。子育ての困りごとを聞き、家庭での関わり方を一緒に考えることがあります。必要に応じて、学校や相談支援事業所などの関係機関と連携する場合もあるでしょう。
送迎の有無・送迎範囲・相談方法は事業所ごとに異なります。利用前に確認が必要です。放課後等デイサービスを利用するには、市区町村へ申請し、支給決定を受ける必要があります。北九州市では、各区役所の高齢者・障害者相談コーナーが申請窓口です。
まとめ|子どもの友達トラブルは背景を整理して対応しよう
友達トラブルが続いていても、それだけで発達障害と判断することはできません。言葉で気持ちを伝えにくい、相手の反応を読み取りにくい、ルールや予定の変化に対応しにくいなど、発達特性が関係している場合はあります。一方で、友達との相性・集団環境・疲れ・不安なども確認が必要です。
家庭では、叱るだけで終わらせず、代わりに取れる行動を具体的に伝えましょう。学校と状況を共有し、子どもが困りやすい場面や有効な対応を一緒に整理することも大切です。
困りごとが続く場合は、自治体の相談窓口や発達障害者支援センターなどを利用できます。放課後等デイサービスが必要かどうかも、相談先や自治体と話し合いながら検討しましょう。子どもを周囲に無理に合わせるのではなく、本人が安心して人と関われる方法と環境を探していくことが重要です。

