「放課後は家でゲームをしていることが多い」「学校で友達とうまく過ごせているのか心配」と、お子さんの交友関係に悩んでいる保護者もいるのではないでしょうか。
発達障害のある子どもの中には、会話のタイミング、遊びのルール、気持ちの伝え方などで困る子がいます。一方で、発達障害があっても友達関係に大きな困りごとがない子や、一人で過ごすことを好む子もいます。
大切なのは、大人の基準で友達の人数を増やそうとするのではなく、子ども本人がどのような場面で困っているのかを確認することです。
本記事では、発達障害のある小学生が友達関係で困る背景や、家庭でできる具体的なサポート、ソーシャルスキルトレーニングの考え方を取り入れた練習方法を解説します。
発達障害のある小学生が友達作りで困る理由
発達障害は、脳の働き方の違いによって、物事の捉え方や行動の仕方に特徴がみられる状態です。親の育て方や本人の努力不足が直接の原因ではありません。
ただし、同じ診断名でも特性の現れ方や困りごとは一人ひとり異なります。本人の特性だけでなく、集団の人数、周囲の音、遊びのルール、相手との関係など、環境との組み合わせによって困りごとが生じる場合もあります。
ASDの特性が関係している場合
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもの中には、表情や言葉のニュアンス、周囲の状況から、相手の意図を読み取ることに難しさがみられる子がいます。
例えば、冗談を文字どおりに受け取ったり、遊びに参加するタイミングが分からなかったりすることがあります。本人に悪気がなくても、率直な言葉が相手を戸惑わせてしまう場合もあるでしょう。
また、決まった手順や自分が理解しているルールを大切にする子もいます。遊びの途中でルールが変わると混乱し、自分の考えを強く主張することがあるかもしれません。
すべてのASDの子どもに同じ特徴があるわけではありません。どのような場面で行き違いが起きているのかを具体的に確認し、本人が理解しやすい伝え方を考えることが大切です。
ADHDの特性が関係している場合
ADHD(注意欠如・多動症)のある子どもの中には、衝動的に行動する、注意を切り替えにくい、相手の話を最後まで聞くことが難しいといった特徴がみられる子がいます。
例えば、遊びに入りたい気持ちが先に立ち、声をかける前におもちゃへ手を伸ばすことがあります。順番を忘れたり、思いついたことをすぐに話して相手の言葉を遮ったりする場合もあります。
こうした行動は、相手を困らせようとしているとは限りません。しかし、周囲から「自分勝手」「ルールを守らない」と受け取られ、関係がぎくしゃくすることがあります。
行動だけを叱るのではなく、「遊びに入りたいときは、まず『入れて』と伝える」など、代わりに取れる行動を具体的に示すことが重要です。
限局性学習症の困りごとが影響している場合
限局性学習症は、学習障害やLDとも呼ばれます。読む、書く、計算するなど、特定の学習活動に大きな困難がみられる状態です。
限局性学習症があること自体が、友達とのコミュニケーションの苦手さを意味するわけではありません。ただし、授業や遊びの中で失敗する経験が重なると、人前で活動することに不安を感じる場合があります。
例えば、音読を避けたい、ボードゲームの点数計算が負担になる、文字を使う遊びに参加しにくいといったことがあります。その結果、友達の輪に入ることをためらう子もいます。
学習面の困りごとが友達関係に影響していないかを確認し、必要に応じて学校と学習方法や参加方法を相談しましょう。
集団環境が本人に合っていない場合
友達関係の困りごとは、子どもの特性だけで生じるとは限りません。
大人数で騒がしい場所、ルールが頻繁に変わる遊び、会話の展開が速い集団などでは、参加しにくさを感じる子がいます。過去にからかわれたり、失敗を強く注意されたりした経験から、友達との関わりを避ける場合もあります。
「友達作りが苦手」と決めつける前に、少人数なら参加できるのか、好きな遊びなら会話が続くのか、安心できる相手とは関われるのかを確認することが大切です。
友達作りで困っている小学生に保護者ができる4つの支援
子どもが友達関係で困っている場合は、本人の気持ちや特性に合わせて関わり方を工夫しましょう。無理に友達を作らせるのではなく、困っている場面を整理し、必要な方法を一緒に考えることが基本です。
子どもが困る場面と得意な場面を把握する
最初に、どのような状況で友達との行き違いが起きているのかを確認します。
- 遊びに入るタイミングが分からない
- 途中でルールが変わると混乱する
- 順番を待つことが難しい
- 言葉で気持ちを伝えることが難しい
- 大人数や騒がしい場所では疲れやすい
困った行動だけでなく、うまく過ごせた場面にも注目してください。「好きな遊びなら会話が続く」「少人数なら落ち着いて参加できる」など、本人に合う条件が分かると支援方法を考えやすくなります。
家庭だけで判断せず、学校の先生、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラーなどから学校での様子を聞くことも役立ちます。
安心して休める家庭環境を整える
学校では、授業だけでなく、休み時間や給食、集団での移動など、さまざまな場面で周囲に合わせることが求められます。そのため、帰宅後に一人で静かに過ごしたがる子もいます。
ゲームや動画を見る時間が、気持ちを切り替えるための休息になっている場合もあります。すぐに否定せず、まずは本人がどのように感じているのかを確認しましょう。
ただし、夜遅くまで続けて睡眠不足になっているなど、生活リズムに影響している場合は調整が必要です。本人と相談しながら、休む時間と生活に必要な時間のバランスを考えてください。
帰宅直後に学校での出来事を詳しく聞くよりも、落ち着いてから話せる時間をつくるほうがよい場合もあります。
具体的で分かりやすい言葉を使う
「ちゃんとして」「仲良くしなさい」といった表現だけでは、何をすればよいのか分かりにくい子がいます。
次のように、取ってほしい行動を具体的に伝えましょう。
- 「遊びに入りたいときは『入れて』と声をかけよう」
- 「貸してほしいときは、取る前に『貸して』と言おう」
- 「嫌なときは『やめてください』と伝えよう」
- 「分からないときは先生に『教えてください』と言おう」
言葉だけで理解しにくい場合は、絵カード、写真、短いメモ、会話の例などを使うと分かりやすくなることがあります。
一度に多くのルールを教えず、今困っている場面に必要な行動から一つずつ練習することが大切です。
結果だけでなく取り組んだ過程を認める
友達との関わりがうまくいかなかったときに、失敗だけを指摘されると、子どもが人との関わりを避けるようになる場合があります。
うまくできたかどうかだけでなく、取り組もうとした過程を具体的に認めましょう。
- 「自分から挨拶しようとしていたね」
- 「順番が来るまで待とうとしていたね」
- 「嫌だったことを言葉で伝えられたね」
- 「困ったときに先生へ相談できたね」
大げさに褒める必要はありません。本人が何をできたのかが分かるように、事実を具体的に伝えることがポイントです。
家庭でできるソーシャルスキルトレーニングの取り入れ方
ソーシャルスキルトレーニング(SST)は、人と関わる場面で必要になる伝え方や行動を、具体的な場面を想定して練習する方法です。
家庭では、SSTの考え方を取り入れ、遊びや会話の中で短時間の練習ができます。ただし、子どもを試したり、できないことを繰り返し注意したりする時間にしないことが大切です。
本人が嫌がる場合や強い負担を感じている場合は無理に続けず、学校や支援機関の専門職に相談しましょう。
挨拶や会話の始め方を練習する
挨拶や会話の始め方が分からない子には、場面ごとの言葉を一緒に考えます。
- 朝、友達に会ったときは「おはよう」
- 遊びに入りたいときは「一緒に遊んでもいい?」
- 何をしているか知りたいときは「何しているの?」
- 何かをしてもらったときは「ありがとう」
保護者が友達役になり、短いやり取りを練習してみましょう。言葉で話すことが難しい場合は、挨拶カードや身振りなど、本人が使いやすい方法を検討します。
挨拶をすることだけを目標にせず、相手との関わりを始める方法の一つとして伝えることが大切です。
相手の気持ちを複数の可能性から考える
絵本、漫画、テレビなどを見ながら、登場人物がどのように感じている可能性があるかを一緒に考える方法があります。
例えば、泣いている人物を見たときに「悲しい」と一つの答えに決めるのではなく、「悲しいのかもしれない」「悔しいのかもしれない」「安心して涙が出たのかもしれない」と複数の可能性を考えます。
「表情はどうなっている?」「その前に何があった?」と、気持ちを考える手がかりを示すと取り組みやすくなります。
正解を当てる練習ではなく、表情や状況から相手の気持ちを考える視点を増やすことが目的です。
困ったときに助けを求める方法を練習する
友達との間で困ったことが起きたときに、一人で抱え込まず、大人へ助けを求める方法を確認しておきましょう。
- 「手伝ってください」
- 「分かりません」
- 「困っています」
- 「少し休みたいです」
- 「先生に話したいです」
言葉で伝えることが難しい子には、カードやメモ、決めた合図を使う方法もあります。
言葉だけを練習するのではなく、「学校では誰に伝えるか」「相手が近くにいないときはどうするか」まで一緒に確認しておくと実際の場面で使いやすくなります。
遊びながら順番を待つ練習をする
順番を待つことが難しい場合は、家庭で分かりやすいルールのある遊びを取り入れてみましょう。
- ボードゲームで交代してサイコロを振る
- ボールを順番に投げる
- 家族で一人ずつ話す
- 順番カードを置いて、誰の番かを見えるようにする
- タイマーを使って待つ時間を分かりやすくする
最初から長時間待たせるのではなく、本人が取り組める短い時間から始めます。待てなかったときに強く叱るのではなく、「今はお父さんの番。次があなたの番だよ」と、順番を確認してください。
友達作りに悩む小学生の保護者が意識したいこと
子どもの友達関係について心配が続くと、保護者も焦りや孤独を感じることがあります。友達を増やすことだけを目標にせず、本人が安心して過ごせているかを基準に考えましょう。
友達の人数だけで判断しない
一人で過ごしていることが、必ずしも問題とは限りません。一人の時間を好み、本人が心地よく過ごしている場合もあります。
確認したいのは、友達の人数ではなく、本人が次のような困りごとを感じているかどうかです。
- 一緒に遊びたいのに、入り方が分からない
- からかわれたり仲間外れにされたりしている
- 友達とのトラブルで学校へ行くことを嫌がっている
- 一人でいることを本人がつらいと感じている
本人が友達との関わりを望んでいる場合は、その希望に合わせて必要な方法を一緒に考えます。大人の理想を押し付けないことが大切です。
保護者だけで抱え込まない
学校の先生、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラー、発達障害者支援センターなどに相談すると、家庭では分からない学校での状況を整理できる場合があります。
親の会や家族会などで、同じような経験を持つ保護者の話を聞くことも選択肢の一つです。ただし、子どもの特性や合う支援方法は一人ひとり異なります。体験談は参考情報として受け取り、そのまま当てはめないようにしましょう。
SNSで相談するときは、子どもの氏名、学校名、写真、具体的な出来事など、本人を特定できる情報を公開しないよう注意が必要です。
子どもなりのペースを見守る
発達の仕方や、人との関わり方を身につけるペースには個人差があります。周囲の子どもと比べるのではなく、以前の本人と比べて変化を見つけることが大切です。
「自分から挨拶できた」「嫌なことを言葉で伝えられた」「困ったときに先生へ相談できた」など、小さな変化も本人にとって大切な経験です。
友達関係の悩みから強い不安や気分の落ち込みが続く、学校生活や家庭生活に大きな影響が出ているといった場合は、学校、地域の相談機関、医療機関などへの相談も検討してください。
友達関係に悩む小学生が放課後等デイサービスで受けられる支援
放課後等デイサービスは、支援を必要とする就学中の子どもに対し、本人の状態や生活上のニーズに応じた支援を行う障害児通所支援です。
現在のガイドラインでは、「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」という5領域を踏まえ、本人支援、家族支援、移行支援などを組み合わせることが示されています。
ただし、プログラム、集団の人数、職員の資格や配置、支援方法は事業所によって異なります。すべての事業所でSSTや少人数活動が行われているわけではありません。
コミュニケーションや遊び方を練習できる場合がある
事業所によっては、遊びや集団活動を通して、気持ちの伝え方やルールの理解を支援しています。
- 遊びに入るときの声のかけ方
- 順番や交代の仕方
- 嫌なことを伝える方法
- 困ったときに職員へ相談する方法
- 自分と相手の気持ちを考える活動
どのような活動を行うかは、本人の発達段階、特性、希望、個別支援計画などによって異なります。参加すれば必ずコミュニケーション能力が高まるというものではありません。
本人に合った環境で集団経験を積める場合がある
大人数や騒がしい環境で疲れやすい子にとって、人数、活動時間、休憩場所などを調整した環境が参加しやすい場合があります。
ただし、放課後等デイサービスが必ず少人数であるとは限りません。利用定員や当日の利用人数、活動の分け方、個別に過ごせる場所の有無などを見学時に確認することが大切です。
集団活動への参加を一律に求めるのではなく、本人が安心できる職員や環境との関係をつくりながら、無理のない形で経験を重ねられるかを確認しましょう。
本人と家族の相談先になる場合がある
放課後等デイサービスでは、子どもへの直接的な支援だけでなく、家族からの相談や、学校などの関係機関との連携を行う場合があります。
家庭と学校で困っている場面や、うまくいった関わり方を共有できると、子どもに伝える方法をそろえやすくなります。
また、学校以外に安心して過ごせる場所や相談できる大人が増えることが、本人や家族の心理的な負担を軽くする場合もあります。ただし、友達ができることや、将来の不登校・気分の落ち込みなどを防げることを保証するサービスではありません。
見学時には支援内容と子どもとの相性を確認する
放課後等デイサービスを検討するときは、次の点を確認しましょう。
- どのような子どもが利用しているか
- SSTや集団活動を行っているか
- 個別に落ち着ける場所があるか
- 子どもが活動を選べるか
- 困った行動があったときにどのように対応するか
- 家庭や学校とどのように情報共有するか
- 子ども本人が見学時にどのように感じているか
利用対象や申請手続き、利用できる日数などは、本人の状況や自治体の支給決定によって異なります。利用を検討する場合は、住んでいる地域の障害福祉担当窓口や障害児相談支援事業所などで確認してください。
まとめ|子どもの希望と困りごとに合わせて友達関係を支えよう
発達障害のある小学生が友達関係で困る背景には、相手の意図の読み取り方、衝動性や注意の特徴、学習上の不安、集団環境との相性など、さまざまな要因があります。
一方で、発達障害のあるすべての子どもが友達作りを苦手とするわけではありません。一人で過ごすことを好み、本人が困っていない場合もあります。
保護者ができるのは、友達の人数を増やそうとすることではなく、本人が困っている場面と、うまく過ごせる条件を確認することです。具体的な声かけ、視覚的な説明、助けを求める練習などが役立つ場合があります。
家庭だけで支えることが難しい場合は、学校、地域の相談機関、医療機関、放課後等デイサービスなどと連携し、子どもが安心して人と関われる環境を整えていきましょう。

