「うちの子、どうして走るのが苦手なんだろう」「はさみがうまく使えないのは発達と関係があるのかな」と不安を感じることはありませんか。
子どもの運動や手先の動きには個人差があります。苦手さには、これまでの運動経験や発達段階、体の使い方、感覚の受け取り方、気持ちの面など、さまざまな要素が関係している場合があります。
運動が苦手だからといって、すぐに発達上の問題があると判断できるわけではありません。大切なのは、苦手な動きだけを見るのではなく、日常生活や園での活動にどの程度影響しているかを確認することです。
この記事では、子どもが苦手に感じやすい動き、考えられる理由、家庭で取り入れやすい遊び、発達相談を検討する目安について解説します。
子どもが運動を苦手に感じやすい動き
幼児期には、遊びや日常生活を通して、走る・跳ぶ・バランスを取る・物を投げるなど、さまざまな動きを経験していきます。
また、はさみや鉛筆を使うような手先の細かな動きも、生活や遊びの中で少しずつ経験していきます。どのような場面で困っているのかを整理すると、子どもに合った関わり方を考えやすくなります。
走る・跳ぶ・止まるなど体を移動させる動き
走る・跳ぶ・方向を変えるといった動きでは、体のさまざまな部分をタイミングよく動かすことが求められます。
子どもによっては、走り方がぎこちなく見えたり、ジャンプのタイミングが合いにくかったり、急な方向転換や停止を難しく感じたりすることがあります。
幼児期は基本的な動きを身につけていく途中の時期です。遊びや生活の中で多様な動きを経験することが、体の使い方を知る機会になります。
投げる・蹴る・捕るなど物を操作する動き
ボールを投げる・蹴る・捕るといった動きでは、目で対象を確認しながら手や足を動かす必要があります。
ボールが近づくと怖くなって顔をそむける、投げる方向が定まりにくい、力加減が難しいなど、苦手さの現れ方はさまざまです。
苦手な動きを無理に繰り返すより、転がす、近い距離から投げる、大きく柔らかいボールを使うなど、取り組みやすい方法から経験することが大切です。
バランスを取る・姿勢を保つ動き
片足で立つ、平均台のような場所を歩く、座った姿勢を保つといった場面では、姿勢を調整する力や感覚など、複数の働きが関係します。
子どもによっては、よくバランスを崩す、座っていると姿勢が変わりやすいといった様子が見られることがあります。
ただし、座っていられないことや活動に集中しにくいことを、すべて「体幹が弱いから」と考えることはできません。環境や活動内容、注意の向け方など、ほかの要素が関係している場合もあります。
はさみや鉛筆など手先を使う動き
はさみで紙を切る、鉛筆で線を書く、ボタンを留めるといった細かな手指の動きは「微細運動」と呼ばれます。
幼児期には発達の途中にあるため、はさみの開閉が難しい、鉛筆の力加減が安定しない、ボタン留めに時間がかかるといったこともあります。
工作や着替え、食事など、日常生活や遊びの中で手指を使う経験を重ねることができます。
子どもの運動が苦手になる原因として考えられること
運動の苦手さを一つの原因だけで説明することはできません。発達段階やこれまでの経験、体の使い方、感覚の特徴、気持ちの面など、複数の要素が関係している場合があります。
体を動かす経験が少ない
体の動かし方は、遊びや日常生活の中でさまざまな動きを経験することで身につけていきます。
生活環境によって外遊びや体を使った遊びの機会が少ない場合は、走る・跳ぶ・投げるなどの動きを経験する機会も少なくなることがあります。
ただし、運動が苦手な理由を単純に「練習不足」と決めつけることは避けましょう。経験以外の要素が関係していることもあります。
姿勢や体の動かし方が発達途中にある
幼児期は、姿勢を保つことや体の複数の部分を協調させて動かすことを経験していく時期です。
同じ年齢であっても、走る・跳ぶ・バランスを取るといった動きの得意不得意には個人差があります。
できない動きだけに注目するのではなく、どのような動きなら楽しめるのか、以前と比べてどのような変化があるのかを見ることが大切です。
失敗や比較によって苦手意識が強くなっている
運動への苦手意識には、気持ちの面が関係することもあります。
失敗した経験が続いたり、周囲の子どもと繰り返し比較されたりすると、「また失敗するかもしれない」と不安になり、運動を避けたくなる場合があります。
結果だけを見るのではなく、挑戦したことや少しできるようになった部分に目を向けると、取り組みやすい雰囲気をつくれます。
感覚の受け取り方や協調運動に個人差がある
体を動かすときには、視覚や聴覚、触覚のほか、自分の体の位置や動きを感じる感覚など、さまざまな情報を使っています。
子どもによっては、音や触れられる感覚に敏感だったり、体の位置や力加減をつかみにくかったりすることがあります。そのような特徴が、運動や生活動作の苦手さとして現れる場合もあります。
本人の努力不足と決めつけず、困りごとが続いている場合は、必要に応じて専門家へ相談することも選択肢です。
運動の苦手さは発達相談が必要?相談を考える目安
運動が苦手というだけで、発達上の問題があるとは判断できません。
相談を考えるときは、苦手な動きの数だけではなく、日常生活や園での活動、安全面、本人の気持ちなどを含めて確認しましょう。
日常生活や園で困っていることがあるか確認する
たとえば、次のような様子が継続して見られる場合は、園の先生や自治体の相談窓口、小児科などに相談してみる方法があります。
- 着替えやボタン留め、食具の操作など身の回りの動作に強い困りごとがある
- 体操や製作など園での活動への参加が難しい状態が続いている
- 転倒や衝突が多く、安全面が気になる
- 運動する場面になると強い不安や拒否が続く
- 家庭と園の両方で体の使い方について気になる様子がある
- 保護者や園の先生が継続して発達上の心配を感じている
一つ当てはまっただけで、発達上の問題があると判断するものではありません。子どもの年齢や発達段階、生活環境によっても様子は異なります。
「診断」ではなく相談の目安として考える
| 様子を見ながら支えやすい例 | 相談を検討してもよい例 |
|---|---|
| 苦手な動きはあるが、日常生活への影響は大きくない | 着替えや食事など複数の日常動作で困りごとが続いている |
| 本人なりの方法で活動に参加できている | 園の活動などへの参加が難しい状態が続いている |
| 楽しめる運動や遊びがある | 運動場面で強い不安や拒否が続いている |
| 少しずつ経験を重ねられている | 家庭や園で安全面を含めた心配が続いている |
この表は診断基準ではありません。気になる場合は家庭だけで判断せず、専門家に相談しながら子どもの様子を整理することが大切です。
子どもの発達や運動について相談できる主な窓口
地域によって名称や相談方法は異なりますが、主な相談先には次のようなものがあります。
- 市区町村の保健センターや子どもの発達に関する相談窓口
乳幼児健診や子育て相談などを通じて、子どもの発達について相談できる場合があります。 - かかりつけの小児科
体の発達や日常生活で気になる様子について相談できます。必要に応じて専門的な医療機関などにつながる場合もあります。 - 児童発達支援センター
地域の発達支援の中核として、子どもや家族からの相談に対応している場合があります。相談方法や対象は地域によって異なるため確認が必要です。 - 発達障害者支援センター
発達障害に関する相談や情報提供、地域の関係機関に関する案内などを行っています。
相談できる機関や費用、予約の必要性は地域や機関によって異なります。お住まいの自治体の案内を確認してください。
運動が苦手な子どもの自信を支える関わり方
運動が苦手な子どもにとって、難しい動きを何度も練習することが必ずしも適しているとは限りません。
本人が無理なく取り組める範囲から始め、体を動かすことへの苦手意識を強めないようにすることが大切です。
難しい動きを小さなステップに分ける
「跳べない」「投げられない」といった動きも、いくつかの動作に分けると取り組みやすくなることがあります。
たとえば縄跳びであれば、次のように段階を分ける方法があります。
- 縄を持って動かしてみる
- 床に置いた縄をまたぐ
- 縄を前に回す動きを経験する
- 縄の動きに合わせてジャンプしてみる
すべてを一度にできるようにする必要はありません。子どもが取り組みやすい段階から始めましょう。
結果だけではなく取り組んだ過程を見る
「なんでできないの」「もっとがんばって」と繰り返すと、運動そのものへの苦手意識が強くなる場合があります。
次のように、取り組んだ過程や本人なりの変化に目を向けた声かけを意識してみましょう。
- 「さっきより遠くまで投げられたね」
- 「やってみようとしたね」
- 「一緒にやってみよう」
- 「難しかったね。今日はここまでにしようか」
他の子どもと比べるのではなく、その子自身のペースを見ることがポイントです。
「練習」だけでなく楽しく体を動かせる機会をつくる
運動が苦手な子どもには、「練習」として繰り返すより、本人が楽しめる遊びの中で体を動かす方法が取り入れやすい場合があります。
音楽に合わせて動く、大きな柔らかいボールを転がす、床の線に沿って歩くなど、遊び方はさまざまです。
本人が嫌がっているときは無理に続けず、「もう一度やってみたい」と思える範囲で楽しむことを優先しましょう。
運動が苦手な子どもと家庭でできる遊びのアイデア
家庭でのサポートに特別なトレーニング器具が必要とは限りません。
日常の遊びの中に、歩く・投げる・しゃがむ・手指を使うなどの動きを取り入れることで、さまざまな体の使い方を経験できます。
バランスや全身の動きを経験できる室内遊び
- 床の線を歩く
床にテープなどで線を作り、その上をゆっくり歩きます。慣れてきたら横歩きなどに変えても楽しめます。 - 動物歩き
ハイハイやクマ歩きなど、子どもが楽しめる動物の動きをまねします。無理な姿勢は避けましょう。 - 床のマークを順番に踏む
床に安全な目印を作り、「赤、青、黄色」のように順番に踏んで進みます。 - 大きく柔らかいボールを転がす
親子で向かい合い、ボールを転がしたり近い距離から投げたりします。
転倒しやすい家具や滑りやすい物が周囲にないことを確認し、大人が見守れる環境で行いましょう。
手先を使う工作・道具遊び
- 粘土遊び
こねる、丸める、つぶすなど、さまざまな手指の動きを経験できます。 - シール貼りや折り紙
つまむ、はがす、貼る、折るといった細かな動きを使います。 - トングを使った移し替え遊び
大きめのスポンジなどをトングでつかみ、別の容器へ移します。 - 大きめのパーツを使ったひも通し
穴にひもを通す動きを遊びとして取り入れられます。
小さなビーズや豆などは誤飲につながるおそれがあります。子どもの年齢に合った大きさの道具を選び、大人が見守りながら行ってください。
まずは5〜10分程度から親子で楽しむ
まとまった時間を確保することが難しい場合は、まず5〜10分程度の短い時間から始めても構いません。
| 遊び | 経験できる動き | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 床の線に沿って歩く | 歩く・バランスを取る | 2〜3分 |
| ハイハイや動物歩き | 全身を使う | 2〜3分 |
| 柔らかいボールを的に向けて投げる | 投げる・目で確認する | 3〜5分 |
| 粘土やシールで遊ぶ | 手指を使う | 3〜5分 |
毎日すべて行う必要はありません。子どもの体調や気分に合わせて、本人がやってみたい遊びを選びましょう。
家庭だけで抱え込まないために知っておきたい児童発達支援
運動や手先の動きに関する困りごとが日常生活に影響している場合は、家庭だけで対応しようとせず、専門的な支援について相談する方法もあります。
児童発達支援で行われる運動・感覚に関する支援
児童発達支援は、主に未就学の障害のある子どもを対象とした障害児通所支援です。
児童発達支援では、「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」という5つの領域を踏まえながら、一人ひとりの状態や生活上のニーズに応じた支援が行われます。
運動・感覚に関する支援として、遊びや活動を通して姿勢や動作、感覚の使い方などを経験する場合があります。
ただし、具体的なプログラムや専門職の配置、支援方法は事業所によって異なります。すべての児童発達支援事業所で同じ運動プログラムや特定の療法が行われているわけではありません。
実際に児童発達支援を通所サービスとして利用する場合は、市区町村への申請と支給決定などの手続きが必要です。詳しい利用条件や手続きは自治体によって確認してください。
専門家への相談を取り入れる流れ
子どもの運動や生活動作が気になる場合は、次のような流れで相談先を探す方法があります。
- 家庭で気になる様子を整理する
どのような動きが難しいのか、どの場面で困っているのかを書き留めておくと相談しやすくなります。 - 園の先生に様子を聞く
家庭とは異なる集団生活での様子を確認します。 - 自治体の相談窓口や小児科などに相談する
子どもの様子に応じて、必要な相談先や支援について一緒に考えてもらえる場合があります。 - 必要に応じて児童発達支援などを検討する
見学の可否や支援内容は事業所によって異なるため、利用を考える場合は事前に確認しましょう。
専門家へ相談することは、子どもを「問題がある」と決めつけることではありません。困っている場面を整理し、その子に合った環境や関わり方を考えるための方法のひとつです。
保護者同士が情報交換できる場を利用する
子どもの運動や発達について悩んでいると、「同じように悩んでいる家庭はあるのかな」と感じることがあります。
地域によっては、子育て支援の場や保護者向けの交流会、勉強会などが行われています。同じような経験を持つ保護者の話が、家庭での関わり方を考えるヒントになることもあります。
一方、SNSなどには医学的・制度的に正確とは限らない情報もあります。制度や発達に関する重要な情報は、自治体や医療機関、公的機関などの情報もあわせて確認しましょう。
まとめ|運動が苦手な子どもは本人のペースに合わせて支えよう
子どもの運動の苦手さには、これまでの経験や発達段階、体の使い方、感覚の特徴、気持ちの面など、さまざまな要素が関係している場合があります。
「運動が苦手=練習不足」「体幹が弱い」と決めつけず、どのような場面で困っているのか、どのような遊びなら楽しめるのかを見ていくことが大切です。
家庭では、床の線を歩く、柔らかいボールを使う、粘土やシールで遊ぶなど、無理なく楽しめる活動から始めてみましょう。遊びの効果には個人差があるため、できることを増やすことだけを目標にせず、本人が安心して参加できることも大切です。
日常生活や園での活動に困りごとが続いている場合や、保護者だけでは判断しにくい場合は、自治体の相談窓口や小児科などへの相談を検討してください。子どもの様子を一緒に整理することで、その子に合った関わり方や支援を考えやすくなります。

