毎日のように続く子どもの激しい癇癪に、疲れを感じている保護者もいるのではないでしょうか。泣き叫ぶ・物を投げる・床に寝転ぶなどの行動には、言葉で伝えにくい気持ちや疲労、不安などが関係している場合があります。
ただし、癇癪があるだけで発達障害と判断することはできません。子どもの年齢・体調・生活環境などを含めて、背景を考える必要があります。
この記事では、癇癪の背景や家庭でできる対応、放課後等デイサービスの支援内容を解説します。利用を検討する際の手続きも、3つのステップに分けて紹介します。
自傷や他害がある場合や、家庭生活に大きな影響が出ている場合は、家庭だけで抱え込まず、学校・小児科・こども家庭センター・発達相談窓口などへの相談も検討しましょう。
子どもの激しい癇癪が起こる主な背景
癇癪は、保護者を困らせる目的で起きているとは限りません。子どもが不安や不快感をうまく伝えられず、行動として表している場合があります。どのような場面で起こりやすいかを記録し、背景を探ることが大切です。
気持ちや要求を言葉で伝えにくいこと
自分の気持ちや困っていることを言葉で伝えにくいと、泣く・叫ぶ・物に当たるなどの行動につながる場合があります。
例えば、学校で嫌なことがあっても、「悲しかった」「困った」と説明できない子どももいます。言葉だけでなく、表情・指差し・絵・カードなども意思を伝える方法です。
子どもが使いやすい方法を一緒に探してみましょう。発達支援では、本人の状態に応じて、多様なコミュニケーション手段を使えるように支援することがあります。
予定の変更や先の見えない状況に不安を感じること
急な予定変更や、次に何が起きるか分からない状況が、強い不安につながる子どももいます。いつもと違う道で帰る、楽しみにしていた予定が中止になるなど、周囲には小さく見える変化が負担になる場合もあるでしょう。
すべての予定変更を避ける必要はありません。変更が分かった時点で伝えたり、次の予定を絵や文字で示したりすると、気持ちを切り替えやすくなることがあります。
写真や絵を使って予定を伝える方法も、見通しを持つための工夫の一つです。
音や光などの刺激で疲れていること
音・光・におい・衣服の肌触りなどを強く感じる子どももいます。学校や買い物先で刺激を受け続けた結果、自宅に戻ってから緊張がほどけ、感情が一気に表れる場合もあるでしょう。
癇癪が起きた場面だけでなく、その前の過ごし方も振り返ることが重要です。睡眠不足・空腹・体調不良・学校での緊張など、複数の要因が重なっている可能性もあります。
子どもの癇癪が起きたときの対応
癇癪が始まると、保護者も焦ってしまうことがあります。まずは安全を確保し、刺激をできるだけ減らしましょう。
落ち着き方は子どもによって異なるため、同じ対応がすべての子どもに合うとは限りません。
子どもと周囲の安全を確保する
最初に確認したいのは、子ども本人と周囲の安全です。次のような対応を検討しましょう。
- 壊れやすい物や危険な物を遠ざける
- 車道や階段など危険な場所から離れる
- きょうだいや周囲の人との距離を確保する
- 安全に移動できない場合は周囲に助けを求める
無理に体を押さえ付けると、興奮やけがにつながるおそれがあります。ただし、自傷や他害などの危険が差し迫っている場合は、安全の確保を優先してください。
家庭で安全を保つことが難しい状態が続く場合は、医療機関や自治体などの相談窓口への相談も検討しましょう。
刺激を減らして落ち着くのを待つ
安全を確保した後は、テレビの音を下げる、人の少ない場所へ移動するなど、周囲の刺激を調整します。
声をかける場合は、「ここで休もう」「大丈夫だよ」など、短く穏やかな言葉を使いましょう。話しかけられると落ち着く子どももいれば、少し距離を置いたほうがよい子どももいます。
抱き締める、背中をさするなどの接触も、本人が望んでいる場合に限ります。日頃から、どのような方法で落ち着きやすいかを確認しておくことが大切です。
落ち着いた後に気持ちを整理する
癇癪の最中に、理由を問い詰めたり説教したりしても、内容が伝わりにくい場合があります。話をするのは、子どもが落ち着きを取り戻した後にしましょう。
「大きな音が嫌だったのかな」「疲れていたのかもしれないね」など、考えられる気持ちを短い言葉で示します。
自分から静かな場所へ移動できた場合や、カードで気持ちを伝えられた場合は、その行動を具体的に認めましょう。泣いたことを責めるのではなく、次に困ったときの伝え方を一緒に考えることが重要です。
子どもの癇癪に備えて家庭でできる工夫
癇癪を完全になくすことを目標にする必要はありません。起きやすい状況を把握し、子どもが困りごとを伝えやすい環境を整えることで、本人と家族の負担を抑えられる場合があります。
癇癪の前後を記録する
癇癪が起きた日時・場所・直前の出来事・その日の体調などを簡単に記録してみましょう。次のような項目を確認します。
- 癇癪の前に何があったか
- どのような行動が見られたか
- 周囲がどのように対応したか
- 何をしたときに落ち着いたか
記録を続けると、疲れている日や予定変更があった日に起こりやすいなど、共通点が見つかる場合があります。学校や支援事業所に相談する際も、具体的な状況を伝えやすくなります。
予定を目で見える形で伝える
口頭で説明するだけでは予定を理解しにくい場合は、スケジュール表・写真・イラスト・タイマーなどを使います。
例えば、「おやつの後に宿題」「タイマーが鳴ったら片付け」と示す方法があります。予定が変更になったときは、変更前と変更後を分かりやすく伝えましょう。
視覚的なツールがすべての子どもに合うとは限りません。本人が理解しやすい方法を選び、必要に応じて学校や支援者にも相談してください。
気持ちを伝える方法を増やす
言葉が出にくいときのために、気持ちや要求を示すカードを用意する方法があります。例えば、次のような言葉や絵を使います。
- つかれた
- 休みたい
- 手伝って
- 静かな場所に行きたい
カードのほか、指差し・ジェスチャー・文字入力などが合う子どももいます。伝え方を一つに決め付けず、本人が使いやすい方法を選びましょう。
放課後等デイサービスにおける癇癪への支援
放課後等デイサービスは、学校等に就学している障害のある子どもに対し、授業終了後や休業日に発達支援などを行う障害児通所支援です。
本人支援だけでなく、家族支援・移行支援・地域支援や関係機関との連携も役割に含まれます。
具体的な支援内容は、子どもの状態や放課後等デイサービス計画、事業所の支援方針によって異なります。癇癪があるという理由だけで、すべての子どもが利用対象になるわけではありません。利用には市町村による支給決定が必要です。
気持ちを伝える方法や行動の切り替えを支援する
子どもの状況によっては、気持ちを伝える練習や、行動を切り替える方法を支援に取り入れることがあります。
例えば、遊びの順番を待つ、困ったときに職員へ伝える、静かな場所で休むといった練習です。
ただし、子どもに我慢させることだけが目的ではありません。本人がどのような場面で困っているかを確認し、環境の調整と本人への支援を組み合わせることが重要です。
放課後等デイサービス計画に基づいて支援する
放課後等デイサービスでは、子どもと家族の状況を確認したうえで、事業所が放課後等デイサービス計画(個別支援計画)を作成します。
計画には、支援目標や具体的な支援内容などが記載されます。児童発達支援管理責任者が中心となって作成し、子どもや保護者に内容を説明します。
「癇癪をなくす」といった一律の目標ではなく、本人が困ったときに休憩を伝えられるようにするなど、本人や家族の状況を踏まえて目標や支援内容を検討します。
家庭での関わり方を一緒に考える
家族への相談支援も、放課後等デイサービスの役割の一つです。事業所での様子を家庭と共有し、どのような声かけや環境調整が合っていたかを一緒に考える場合があります。
保護者向けの面談や情報提供、ペアレント・トレーニングなどを行っている事業所もあります。実施内容や頻度は事業所ごとに異なるため、利用前に確認しましょう。
癇癪への支援を相談しやすい放課後等デイサービスの選び方
事業所を選ぶ際は、ホームページの印象だけで決めず、実際の支援方針や職員体制を確認しましょう。癇癪が起きたときの対応だけでなく、本人の意思を尊重しているかも大切なポイントです。
職員体制と支援方針を確認する
放課後等デイサービスには、児童発達支援管理責任者や、児童指導員または保育士などが配置されています。ただし、職員が持つ資格・経験・得意分野は事業所によって異なります。
見学や相談の際は、次の点を確認しましょう。
- 子どもの行動の背景をどのように把握するか
- 職員向けの研修を実施しているか
- 放課後等デイサービス計画をどのように作成するか
- 保護者へ支援内容をどのように説明しているか
「癇癪を必ず減らせる」と説明する事業所ではなく、本人の状況を確認しながら支援方法を考える事業所を選ぶことが大切です。
見学で環境や安全対策を確かめる
見学では、活動中の子どもの様子や職員の接し方を確認します。落ち着いて休める場所があるか、危険な物が放置されていないかなども見ておきましょう。
クールダウン専用の部屋がない場合でも、必要なときに休める場所や方法が決められているかを確認できます。
事故防止や安全計画、緊急時の連絡方法について質問することも大切です。放課後等デイサービスでは、子どもの特性を踏まえて安全を確保するための取り組みが求められています。
家庭との連絡方法を確認する
家庭と事業所で情報を共有できるかも確認しましょう。連絡帳・アプリ・送迎時の申し送り・定期面談など、連絡方法は事業所によって異なります。
子どもが落ち着いて過ごせた方法だけでなく、困った場面や体調の変化も共有してもらえるかがポイントです。
送迎サービスの有無・対象地域・送迎時間も事業所ごとに異なります。利用前に確認してください。
放課後等デイサービスを利用するための3ステップ
放課後等デイサービスを障害児通所支援として利用するには、市町村への申請と支給決定が必要です。支給決定を受けると、通所受給者証が交付されます。
手続きの順番や必要書類は自治体や子どもの状況によって異なるため、最初に担当窓口へ確認しましょう。
ステップ1|自治体の担当窓口へ相談する
まずは、住んでいる市区町村の障害児通所支援を担当する窓口へ相談します。担当部署の名称は自治体によって異なります。
北九州市では、各区役所の高齢者・障害者相談コーナーで申請を受け付けています。子どもの状態や家庭の状況、希望する支援などを確認したうえで、支給の必要性などが検討されます。
相談時には、癇癪が起こりやすい場面や学校での様子を整理しておくと、状況を伝えやすくなります。
ステップ2|支給申請と利用計画の作成を進める
市区町村へ障害児通所給付費の支給申請を行います。申請にあたっては、障害児相談支援事業所が作成する「障害児支援利用計画案」などを用いて、必要な支援について整理します。
北九州市では、相談支援事業所が見つからない場合や本人が希望する場合に、例外的に本人や家族等が作成するセルフプランを利用できることがあります。
診断書を含む必要書類の取扱いは、自治体や子どもの状況によって異なります。申請前に担当窓口へ確認し、案内に沿って準備しましょう。
申請から支給決定までにかかる期間も、自治体や申請内容によって異なります。
ステップ3|事業所を選んで利用契約を結ぶ
支給決定を受けて通所受給者証が交付されたら、利用を希望する事業所と契約を進めます。
事業所は自治体が自動的に決めるものではありません。保護者が見学や相談を行い、支援内容や空き状況などを確認して選びます。
契約前には、次の内容を確認しましょう。
- 利用できる曜日と時間
- 通所受給者証に記載された支給量
- 利用者負担や実費
- 送迎の有無と対象地域
事業所探しや見学は、受給者証が交付される前から進められる場合もあります。自治体や希望する事業所へ確認しながら進めましょう。
子どもの癇癪に悩む保護者の負担を軽くする方法
癇癪への対応が続くと、保護者の心身にも大きな負担がかかります。保護者が疲れていることは、努力不足を意味するものではありません。一人で解決しようとせず、周囲の人や相談機関を頼ることも大切です。
一人で抱え込まず相談する
放課後等デイサービスだけが相談先ではありません。学校の担任や養護教諭・小児科・児童精神科・保健センター・こども家庭センター・発達相談に対応する窓口などにも相談できます。
学校と家庭で子どもの様子が異なる場合もあるため、それぞれの場面で起きていることを共有しましょう。相談先が合わないと感じた場合は、別の窓口を利用する方法もあります。
短い時間でも休息を取る
保護者が休む時間を確保することも重要です。長い休暇を取れなくても、家族や支援者に協力を求め、短時間でも一人で過ごせる時間をつくりましょう。
子どもが事業所や学校で過ごしている時間を、家事だけでなく休息に使うことも選択肢の一つです。
十分に休めない状態や気分の落ち込みが続いている場合は、保護者自身も医療機関や相談窓口への相談を検討してください。
家族や同じ立場の保護者と気持ちを共有する
悩みを誰かに話すと、気持ちを整理しやすくなる場合があります。家族・友人・保護者会・自治体の相談会など、話しやすい相手や場所を選びましょう。
ほかの家庭でうまくいった方法が、自分の子どもにも合うとは限りません。体験談は参考の一つとして受け止め、本人の状態に合わせて取り入れることが大切です。
まとめ|家庭だけで抱え込まず子どもに合った支援を探そう
子どもの癇癪には、気持ちを伝える難しさ・予定変更への不安・感覚刺激・疲労など、さまざまな背景が考えられます。癇癪だけで発達障害と判断せず、どのような場面で起きているかを丁寧に確認しましょう。
放課後等デイサービスでは、放課後等デイサービス計画に基づき、本人支援や家族支援などが行われます。ただし、具体的な支援内容・職員体制・送迎の有無などは事業所によって異なります。
利用を検討する場合は、自治体への相談、支給申請と利用計画の作成、事業所の選定・契約という流れを目安に進めましょう。具体的な手続きや必要書類は自治体によって異なるため、担当窓口への確認が必要です。
自傷や他害がある場合や、子どもと家族の生活に大きな影響が出ている場合は、早めに学校・医療機関・自治体の相談窓口などへ相談してください。家庭だけで抱え込まず、子どもと家族の状況に合った支援を少しずつ探していきましょう。

